しあわせゆき №29

「アユコさん、降りますからね。準備をして置いてくださいよ?」

駅長がそして車両に入ってきた。駅長は平然としていた。アユコが泣いていたことも駅長はしっかりと知っていた。しかし平然とそこに立っていた。

「アユコの切符がすりかえられてるんだ。アユコはしあわせゆきの切符を持ってたんだ。駅長なら知ってるだろ?」

シュンはそう駅長に尋ねた。こんな駅長だ。四人が持っていた切符のことぐらい、知っていてもおかしくはない。

「すりかえられてる?それなら犯人は誰なんですか?そんなわけないでしょう。切符が変わっただけですよ。」

駅長は普通にそう答えた。切符が変わるわけがない。けれど、駅長は平然とそう言う。この駅長にとってはそんなのおかしくもないこと、とでもいうような感じだ。

「どうして変わるんだよ・・・・・・。」

シュンはまたそう駅長に尋ねた。シュンには納得が出来なかった。だってアユコが出口駅で降りる理由なんてないのだから。それはカズマもタカギも同意見だった。けれど駅長は急にくすくすと笑い始めた。そして段々に大笑いし始めた。三人には不気味でたまらなかった。

「それはしあわせゆきにいく資格がなくなったからだよ。君らには分からないのかい?」

駅長は笑い狂いながらもそう言った。まるで三人を馬鹿にしているかのようだった。ここに乗っている三人はしあわせゆきにいくべき人間・・・・・・しあわせゆきにいく資格がなくなったら――。

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しあわせゆき №30

「なんだよ資格がないってさぁ!資格があるから乗ってんだろうが!」

シュンはそういい怒鳴り散らした。すると駅長さんは不気味に微笑んだ。ガタンガタンと相変わらず電車は動いていく。出口駅へと――さっきとなんも変わらず。さっきと四人は違うのに。電車だけは何事もなく走っている。

「君らはどうしてアユコさんがここに乗っているのか分かっていない。」

そして駅長さんがそう言った。四人ともそんなのしあわせゆきに着いて幸せになるためだと当たり前のように思った。それがこの電車に乗る理由なんだから――。

「アユコさんは、もう不幸で孤独ではない。」

駅長さんはそう言った。四人ははっとした。それはしあわせゆきに行く理由がなくなったということではないのだろうか。しあわせゆきとは、多分不幸なかわいそうな人間が幸せになるためにある場所・・・・・・そんなところに自分の悩みを克服して楽しそうなアユコは――行ってはいけない。アユコはもう、しあわせゆきにまで行かなくても大丈夫だということだ。いや、そうなってしまうのだ。

「そんなの自分勝手すぎる!急に行き場所を変えられては困ると思いますが。」

タカギは慌てて反論した。タカギだってシュンと同様、納得がいかなかった。

「アユコさんがここにいる理由を教えてあげましょうか・・・・・・。」

駅長さんがにったりといった。四人ともごくりとつばを飲んだ。アユコはただしあわせゆきに行くためにここにいるのではないのだろうか・・・・・・?アユコ自信も、自分が他の三人とは違うということが判明してとてもぞくぞくしている。もしかしたら自分はとんでもない目にあうのかもしれないのだ。この電車の中で、何が起こるかなんて分からない。

「それはですね・・・・・・。」

駅長さんの口が動いた。四人は心臓がバクバクして、その次の言葉を聞いていいものなのか不安を抱いた。けれども駅長さんの口はどんどん話し始めた。

「アユコさんはここで幸せに解決するためにここにいる。アユコさんはもともとしあわせゆきに行くのを目的にここにいるのではないのですよ。この電車の中で、幸せになって、出口駅で降りていくのが、もうすでにアユコさんの決まっていた道なのです・・・・・・。」

               つづくnight

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しあわせゆき №31

駅長さんはそう言った。みんな唖然として、返す言葉がなかった。駅長さんは四人をそれぞれ見ると、それから何も言わずに隣の車両へと行ってしまった。四人ともびっくりしてしまった。何がなんだか、分からなくなってしまった――。

 それから、四人はそれぞれ別々に離れたところに座っていた。みんな暗い気持ちで、これからどうすればいいのか全然思いつかない様子だった。もしかしたらこの中でアユコ以外にもしあわせゆきに行けれない人が出てくるんじゃないかという不安や、一人ぼっちになってしまうんじゃないかという不安が、三人にはあった。そしてアユコには、今までの生活に戻らなければならないという複雑な思いと、もう二度と三人に会えないんじゃないかという不安が、心の中をよぎっていた。

 「三人とも、来い。」

すると急に、シュンが立ち上がった。そしてなぜか急に三人を集めた。なんとシュンにはとある考えが思いついたのだ。三人はもうどうしようもないような状況だったため、シュンのところに集まった。三人に見えるシュンの表情には、とても不安や心配そうな様子は見られなかった。でもシュンはマイナスの顔が出ない性格。一番四人の中で追い詰められていたのは、多分シュンではないのだろうか・・・・・・。

「みんなで、出口駅で降りよう。」

するとシュンはまじめな顔でそう言った。三人はびっくりしてつばをごくりと飲んだ。シュンは一体、なんてことを考えているのだろうというような表情で。三人はそうやってびっくりしたけれど、シュンは真剣だった。それが三人にも分かったので、三人は馬鹿にすることなくびっくりしながらも真剣に聞いた。

「俺はこのままみんなとバラバラに別れるのはいやだ。これで一人になったりすんのは真っ平だ。いっそのこと、みんなで降りよう。切符なんて関係ねぇ。こんな切符、おれらが買ったもんじゃねえもん。この様子だと、アユコは降りざる終えなくなる。だから俺らも一緒に出よう。こんなのひでぇよ。」

シュンはそう言った。シュンらしい答えだった。そしてシュンのくだした決断だった。シュンは別れが嫌いだった。それも今回のアユコとの別れ、どうもシュンには納得がいかなかった。シュンは別にしあわせゆきで降りたいわけではなかった。なので出口駅で降りてもかまわなかった。速くこの電車から出たいという気持ちもあったが、今はそんな気持ちでそんなことを言っているわけではなかった。

「僕はそれでもかまいません。もしも僕らが出口駅で降りて、今後どうなるかは分かりませんが、今後どうなるか分からないのはしあわせゆきでだって同じです。」

タカギはそう言った。タカギはシュンの意見に賛成したのだ。シュンの考えは異常なほど大胆すぎることは、タカギは承知の上だった。もっといい方法だってあるに決まっていることだって。しかし、この四人で行う行動だったら――これだと思った。

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しあわせゆき №32

「カズマは?おまえはどうだ?」

するとシュンがカズマにそう聞いた。カズマは急な問いにどうすればいいのか分からなかった。これから悪いようなことをする。そしてその後どうなるのかも分からない。このままこの電車に乗っていたほうが安全なんも確か。でも――カズマには何が正しいことなのか分からなかった。

「カズマ?」

シュンが聞き返す。カズマは速く返事をしなければならないとあせった。

「うん、一緒にやるよ。」

カズマはそう答えた。するとシュンはにっこりした。カズマはふとあることを思い出したのだ。今自分が、この世に生きていたいのかどうかを――カズマは別にそこまで生きていたいわけではなかった。けれどわざわざ死ぬ気もなかった。だからこの機会に、生きるか死ぬかの賭けをしても、何の緊張もなかった。どっちに転んでも、別によかった。こんな世の中に生きていくのと、こんな世の中を去っていくの――。

「みんな、本当に一緒に降りてくれるの・・・・・・?」

するとアユコが不安そうな表情でそう言った。三人は何事もなくこくりとうなずいた。アユコはするとほっとしたように安心した顔になった。

「じゃあ、みんなで降りようぜ!」

シュンが笑顔でそう言った。三人は笑顔で返した。

「出口駅ぃ、出口駅ぃ・・・・・・出口駅に到着します。お降り方は降りる準備をしてください。」

そんなアナウンスが、電車中に響きわたった。四人ははっとしてそれを聞くと、降りる準備を始めた・・・・・・。

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しあわせゆき №33

「よし、準備すんぞ。」

するとシュンがそう言った。三人はシュンの言葉に、しっかりとうなずいた。どきどきと緊張をして言葉なんて出なかった。

 そして四人は電車の出入り口の目の前に立った。みんな無言で、じっと外を眺めていた。そして手をしっかりと握っていた。強く強く、それでもって温かくて、まるでみんなの気持ちが同じかのようだった。

「プルルルルルー」

そんな音とともに、電車が止まった。四人はごくりとつばを飲んだ。すると、出入り口の扉が開いた。

「じゃあ、行くか。」

シュンはそう言った。

「いっせーのーでで行きましょう。」

タカギはそう言った。

「みんなで行こう。」

そしてカズマはそう言った。

「うん、そうしよう。」

アユコはそう言った。

 そして四人は、一歩を踏み出した。

「ギャー!」

すると急に辺り全体が光に覆われた。カズマは一体なんなのかよく意味が分からなかった。思わずカズマは、叫んでしまった――。

 そして・・・・・・。

「ちっくしょう!ちくしょう!」

ふと気がつくとカズマにはそんなシュンの嘆き声が聞こえた。はっとしてシュンのほうを見ると、とても悔しそうな顔をしていた。そして、タカギもいる。それも、電車の中だった――。けれど、アユコがいない・・・・・・。

「カズマさん、あれ・・・・・・。」

すると立ち尽くしているタカギが、窓の向こうを指差した。カズマがその方向を見ると・・・・・・アユコの姿が見えた。駅のホームで、楽しそうに階段を下りてゆくアユコ。それも周りには、カズマも、シュンも、タカギもいた。そして、アユコの姿は見えなくなってしまった。

「何あれ・・・・・・。」

カズマはびっくりして思わずボソッとそう言った。

「どうやら、アユコさんは幸せにみんなと電車を降りてめでたしめでたしとなったみたいです。」

タカギはそんなカズマにそう返す。

「俺らの幸せはどこまで行けばあるんだよ!!」

シュンは大声で叫んだ。二人とも、何も答えられなかった。

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