22 西嶋と野球・・・
次の日――。
「へー、西嶋知らなかったのー?」
西嶋が佐々木に川村のことを話したら、佐々木の反応はこうだった。
「佐々木も知ってたのかよ・・・・・・。」
あきれたようにそう西嶋は口にする。やはり二人が同じ部屋だと知らなかったのは二人だけだった。
「みんな知ってるよー。まさか同じ部屋の連中が知らないだなんて思わないでしょー。」
きっぱりと佐々木はそう言う。
「そ。それもそうか・・・・・・。」
もっともなことを佐々木に言われ、もう納得するしかない西嶋。
「で、仲良くなれたー?」
そして佐々木はそう聞く。それから西嶋はこれまでのことを振り返る。
「い、いや、そんなでもなかった。」
昨日の様子からではこれはもっとも適切な返事だった。
「教室ではー?」
そしてまた佐々木は聞く。
「別に一緒にいるわけじゃないし・・・・・・席は前だけど。」
そして西嶋はそう答える。これも適切な返事だろう。
「一緒にいるかとかはともかくとして、同じ部屋に住んでるのに仲良くないってさー・・・・・・。」
そして佐々木が何かを言いかける。
「なんだよ。」
そして西嶋が聞く。
「周りにさー・・・・・・。」
そして佐々木の言葉に間が空く。
「いいから言え!」
西嶋は佐々木を急かす。
「川村嫌ってるみてー。小さないじめてるとかー?どう見ても周りから見たら西嶋が川村をいじめてるとしか見られないじゃーん。まさか川村が西嶋をいじめてるだなんて思う人、あれをみていないんじゃなーい?」
「えっ・・・・・・。」
佐々木の言葉に西嶋の言葉がつまる。
「おれはいじめてねえよ!!」
と、いうことで――。
「川村、一緒に理科室行こうぜ。」
「うん、いいよぉ。」
五時間目の移動教室で西嶋は川村を誘った。(単純にオッケーしたなぁ・・・・・・)と、西嶋は思った。いつもは一緒に行っていないのに、急にそんなことを言われ川村は全然躊躇しなかったのだ。それは西嶋じゃなくても少しは不思議に思うだろう。それもまだそこまで親しい関係でもないわけでもあり――。で、実はその時川村は(いつも一緒に言ってる小島君とかがいない・・・・・・きっと僕に気を使ってくれているんだ!いやな顔は絶対にしちゃいけない!)などと思っていた。川村は人の親切を踏みにじむようなことはしたくないようなたちなので、この反応はおかしくなかったのだ。
しかし――。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
(会話がねえ!)と、西嶋はあせった。(そういや何を話せばいいんだ?何も考えてなかった・・・・・・てか普通そんなこと考えてから誘わねえよ!ってそう言うことじゃなくておれはこれからどうするんだ!?)西嶋の思考回路はぐるぐると回っていた。で、そのころ川村は(話すのとかいやなタイプなのかなぁ・・・・・・いや、よくみんなでわいわいしてる。こういう空気はイヤだ!)と、決心を固めていた。
「西嶋君って前々から佐々木君と知り合いだったの?クラス違うのにお弁当一緒に食べたりとか・・・・・・。」
川村は西嶋にそう聞いた。(おっ、その手があったか!)西嶋はなぜだかとても気が楽になった。
「ちげえよ?親同士が知り合いだったらしくてさ、入学式のときに知り合った。そのときに一緒に弁当食おうとかって言う展開になった。」
西嶋はそう答えた。西嶋は答えたはいいが、この後「そうなんだ」と川村が言って会話が終わってしまうのではないかと思った。気づいたころにはもう言い終わっていて、不安でいっぱいになった。
「へえ、すごい仲良しに見えたのに・・・・・・。」
すると川村はそう言った。川村は西嶋が考えているような人間ではなかった。どちらかといえば話を膨らませようとする人間だった。
「多分佐々木が人見知りしないタイプだからだと思う。あいつ普通にナンパとかするからな。その上年上にも堂々と。逆ナンだってある。」
西嶋は一生懸命に話す。そのせいもあり川村のちょっとした言葉にも長文で答えてしまう。
「西嶋君も一緒に?」
恐る恐る川村は聞く。
「するわけねえ。おまえ絶対そうじゃないって思ってたけど聞いただろう。」
西嶋の言葉に川村がうなずく。
「んまあ、急に始めるからそばにいるってことはあるけどな。おれは、してねえ。」
そしてちょっと付け足す西嶋。
「僕、ナンパする人とか初めて見た・・・・・・。」
「おれもだし。すげーよあいつは・・・・・・。」
そして二人はそう交わし続ける。そんな中、西嶋はあることに気づいた。自分が川村にリードしてもらって会話をしていることを。
「佐々木君が西嶋君がサッカーうまいって言ってた。」
「佐々木とそんなことをしゃべったのか!?いつ!?」
西嶋はびっくりした。とてもあの二人がしゃべっている光景など想像がつかない。川村はあまりにも西嶋がびっくりしたのでそれにびっくりする。
「図書室に行ったら偶然・・・・・・佐々木君、図書委員なんだって。」
ちょっとビクビクしながらも川村は言う。
「ごめん、驚いて・・・・・・。」
川村の様子を見て西嶋は言う。
「でもおれは上手くない。中学の部活引退してからだから。サッカー始めたの。」
そして続けてそうも言う。
「前は何やってたの?」
川村はそう何も考えずにそう言った。中学ではやっていなかったサッカーを高校で始めたということに何も不信感を持たずに。
「・・・・・・。」
西嶋は、答えなかった。(変なこと聞いちゃった・・・・・)と、川村は後悔した。そして西嶋も、自分の声がつまってしまったことに後悔した。
「でもすごいな。受験勉強しながらサッカーを上達させてたなんて。」
川村が慌ててそう言う。西嶋には川村が気づかっているようにしか見えなかった。
「野球部。」
ボソッと西嶋は言った。
「・・・・・・。」
はっと川村の中で中学時代の野球部の思い出を思い出す。
「野球部だったんだよ・・・おれ・・・・・・。」
西嶋は今度はしっかりと言う。川村の中で、野球部のころの思い出はどんどんとこみ上げる。
「むちゃくちゃだろ?」
笑いながら西嶋は言った。
「別に中学で野球やってたからって高校でもやんなきゃいけないなんて理由ないよ!」
すると川村はきっぱりとそう言った。あまりにもしっかりとした発言だったので、西嶋は驚いた。ついつい西嶋の体がピクッとしてしまった。(僕だったら、なぐさめてもらいたい・・・・・・)と、川村は思った。川村はただ、自分がしてほしいことをするだけだ。人に声をかけるのは苦手だけれど、それ以外だったらそう考えて発言する。(どうしてあいつはそんなこと言うんだよ・・・・・・)と、西嶋は思った。
それから二人は理科室につき、席に着いた。授業中、西嶋は中学時代のことやさっきのことをいろいろと考えていた。(川村はおれにいやな思いをさせたくなかったのか?それとも・・・・・・おれがあいつのせいでいやな思いして嫌われるとでも思ったのか?)いろいろなことが考えられる。けれど西島の考えはその通りだった。川村は、どちらも思っていた。川村は嫌われることも恐れている。「どぉして西嶋野球をやらぁん?やっちゃぁいけねぇのは、おれたちじゃなぁい!」そんな親友の言葉が、なぜか思い出された。(おれにはやりたい場所がないんだよな、きっと・・・・・・)と、西嶋はふと思ってしまうのだった。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*
みなさん、アピールはどうですか?
西嶋がだんだんに出てきましたね。
さぁ、これからは佐々木が今よりも動いていきます。
佐々木にもご注目あれ!
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