35 伝わる心
その夜のこと。今日は西嶋は帰りが早く、川村とまともにいられた。
「川村、夕飯。もしかしていらない?」
西嶋は夕飯を作った。そして川村を呼びに来た。川村は布団に包まって姿を見せない。しかし、うなずいたようで布団が揺れる。
「じゃあ先食べてるから。」
そして西嶋はそう言うと、一人で夕飯を食べ始めた。
すると・・・・・・。
「川村ぁ、西嶋ぁ、夕食ちょうだぁい!」
と、山岡が現れた。
「なんでまた・・・・・・。」
あきれたように西嶋は言った。
「意地悪な三浦がいたずらしたから夕食抜きだってさぁ。」
山岡はそうため息をつきながら西嶋が食べていたチャーハンを手で取り食べる。
「勝手に食べんな!ってかそれ自業自得だろうが!まああまってるから別にいいけど。」
西嶋はそう言いながら山岡から皿を遠ざけた。そして別の皿で山岡の分をよそう。
「川村は?」
あぐらをかきながら座り西嶋に聞く山岡。
「そこ。」
西嶋はテーブルに皿を置きながらそう言う。
「ないてんじゃん。」
すると山岡は、そう言った。
「えっ・・・・・・。」
西嶋は、びっくりした。西嶋には、川村がないているだなんて全然気づかなかった。泣き声だって全然聞こえない。ましてや震えている様子もない。一体どうやって、それが分かるというのだろうか?山岡はさっとベットの下に行った。そして西嶋も、それについて行った。
「川村、泣いてんの?はしご下ろせよ。」
西嶋はそう川村に向かっていった。しかし、はしごがおりる様子はない。川村は不審者に備え、いつもはしごを上げている。
「川村ぁ。」
山岡はそう言いながらなんと、ベットを登り始めた。
「ちょ、ちょっと山岡!」
慌てて西嶋がそんな山岡を止めようとする。(すげぇ、あいつ――)と、少し感心もしてしまった。
「川村、どした?」
そして山岡は、ベットの上にたどり着いた。
「・・・・・・。」
川村は何も、答えない。そして山岡は驚くべきことをした!
「・・・・・・。」
あまりの行動に、西嶋は言葉を失った。なんと山岡は、川村を抱きしめたのだ・・・・・・。しっかりと布団から川村を出し、しっかりと川村を見て。
「こうするとな、相手の気持ちが分かるんだぜ。つまり川村の気持ちが分かるんだ。つらくて、寂しくて、孤独な気持ち。誰かに助けてもらいたいってな。おれには分かる。」
そして山岡はそう言った。川村は目が充血していたけれど、涙はもう止まっていた。確かに川村は、泣いていた。山岡にそのことがばれて、びくびくしていた。自分の弱いところを見られるのが怖くて怖くて仕方がなかった。見た目の弱々しい自分ではなく、もっと心の底から弱々しくなっている自分を見られるのが・・・・・・。
「川村・・・・・・。」
西嶋はそう言った。しかしとても弱々しい声だった。だから二人には、とても聞こえなかった。なんともいえないこの気持ち。もどかしいこの気持ち。悔しいこの気持ち――。西嶋には耐え切れなかった。しかし、どうすることもできなかった。
「川村、おまえにはおれの気持ち伝わってるかぁ?」
おとボケた感じで山岡はそう言った。
「おまえを、助けたい。」
重い言葉だった。西嶋にも、しっかりと聞こえていた。なんてったって、重い言葉なのだから・・・・・・。
「苦しい・・・助けて・・・・・・。」
すると川村からの返事は、そんなものだった。山岡はびっくりして腕を緩め、川村をきょとんとした顔で見た。そして川村と山岡は、目があった。
「もっとぎゅっとしてやるぅ!」
山岡は満面の笑みでそう言った。
「う、うぅ・・・・・・。」
苦しそうな川村。
「もっともっとぉ!」
「死んじゃうよぉ!!」
あまりの騒がしさに、ベットが揺れる。(全くこいつらは・・・・・・)と、西嶋はあきれてしまうのだった。
「よしっ!こんなもん!」
すると急に山岡はそう抱きしめるのをやめた。そして川村はポカーンとする。
「元気でた?」
山岡は優しくそう言った。
「うん!」
そして川村は、元気よく答えたのであった。
「おぉい、山岡ぁ。おまえ二人の夕食食べようとしただろう。」
すると急にいつからいたのか三浦が山岡にそう言った。いつの間にか三浦は西嶋の後ろにいた。
「三浦がくれないからだろ!」
怒った顔で山岡は言う。半分すね気味だ。
「全く。」
あきれたように三浦はそういうと、ため息をついた。
「ちょっとおれここで川村と遊んでるぅ。」
「はいはい、勝手にしてろよ全く。」
「おぉ!」
そして二人はそう交わすと、別々に行動し始めたのだった。
「み、三浦、見てた・・・・・・?」
ふと三浦が気がつくと、歯を食いしばっているような西嶋の姿があった。三浦にはすぐにはその表情の意味は分からなかった。
「うん。西嶋がしかとされてるところも。」
にんまりと三浦はそう言った。
「そ、それはほっとけよ。」
顔を赤くして西嶋は言った。三浦は西嶋の気持ちが、なんとなく分かったような気がした。
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