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56 紫の気持ちの裏には・・・

 そしてそんな西嶋と篠木よりも、大変なことになっていたのは三浦と紫のペアーだった。どうみても、観覧車はそこだけやけに揺れていた。
「どうして私なのよ!」
「怒ってるねえ。」
「そんなの見れば分かるでしょ!」
「なんとなくなぁ。」
「こんなに表現してるっていうのになんとなく程度なの!?ちょーありえない!!」
二人は観覧車に乗るなりそんな元気な口論を始めていた。この二人、今日に関してはしゃべりすぎだ。
「ど、どうして私を選んだのよ!」
少し動揺しながらも紫は言う。
「えっ?どうして?」
キョトンとした顔で三浦は言う。
「だって、率直過ぎたから!!」
そしてそう紫はこたえる。いつの間にか紫は、興奮してるんだか照れてるんだか、異常なほど顔を真っ赤にしていた。紫にしては、取り乱しているような気がする。
「べっつにぃ。ちょっと悪いことしちまったし。」
三浦はそう言い、紫から目線をそらす。そしてぼんやりと空を見ている。紫には一瞬、あのときのことが思い出された。そんな深い意味でこんなやつが自分を選んだなど、紫は考えもしていなかった。そっけなく、もっと気軽な答えが返ってくるもんだとてっきり思っていたのだ。
「あっ、あぁ、二股のこと!これで罪滅ぼしでもしたつもり?残念だけど、もうあんたに二股する気も深くかかわる気も全くないんだから!」
少し動揺しながらも、紫はそうドンと構える。すると、三浦がチラッと紫を見た。その目は何だか疑い深い顔。紫はドキッとして体をびくつかせる。するとまた三浦の目線は変わる。
「おまえ、二股でもいいから、癒されたいんだろ?」
「えっ・・・・・・。」
紫はびっくりして言葉を失った。
「かわいそうだよ、あんた。ろくにしっかり愛されたこともないんだろぉ。」
その三浦の行っている姿は、真剣そのものだった。
「やめてよ、そういうの・・・・・・。」
いつの間にか、嫌な空気がここを漂わせる。
「て、てか、ばかなこと言わないでよね!」
紫がいくらがんばっても、ここの空気は変わらない。三浦の情が大きいことを、今の状況が物語っている。紫では、もうどうにもできないような状況がここにある・・・・・・。
「おっ、頂上だ。」
三浦はそう言い、下を見下ろし始める。しかし、紫は全く見る気がしない。あんなことを言われてしまえば、返す言葉どころか自分がどうすればいいのかも分からなくなる。(私、失恋したばっかりなのに・・・・・・どうしてこんなときにそんなこと言うのよ・・・・・・)と、紫はふとそう思う。そう思ったとたん、泣きそうになっている自分がいた。紫は、この前振られたばかりだった。紫は今までに何人かの人と付き合ってきた。しかし、誰もが告白しておいて振っていった。それはどれも紫が悪いわけではなかった。彼の、ただの自分勝手・・・・・・。
「・・・・・・?」
そんな紫の様子に三浦が気づき、キョトンとした顔で紫を見る。それに気づいた紫は、少し不機嫌な顔で三浦を見た。少し涙目にはなっていたが、その顔は少し怖かった。そんな紫に、三浦はにんまりとした表情を見せるとこう言った。
「もしかして・・・・・・高所恐怖症?」
紫には、想像絶するものだった。
「ちがぁう!ばかにすんじゃないわよ!」
「ば、ばかにしてた!?」
「してたわよ!」
「いやぁ、びっくり。」
そしてまた、元の雰囲気に戻る二人・・・・・・。(こいつ、変なやつだなぁ)と、三浦は思う。(どうしてあいつ、おかしいんじゃないの!?)と、そして紫も。つまり、お互い同じような感じで相手を見合っているようだ。
 そして二人は終わりよければすべてよしというような感じで、観覧車を降りたのだった・・・・・・。

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