小説・童話

「しあわせゆき」よりあとがき

「しあわせゆき」、やっとのことで終わりました。

いつになったら終わるかな、とうきうきしながら投稿していました。

幸せというものは難しいもので、幸せがいいものとは限りません。

しあわせ=いいこと、と考えるのは少しおかしいと思うときがありまして。

そんなときに思いついたのがこの話、「しあわせゆき」です。

主人公カズマは、いつもどことなく楽しくない生活をしていた中学生。

そんなカズマがしあわせゆきへと続く電車に乗ったことで気持ちが変わります。

友達を病気で亡くしてしまったアユコ、戦争中、兄弟たちとともに一生懸命に生きるシュン、そしてひどいいじめを受けているコウヤ。

カズマは自分があまりにも小さい人間だと言うことに気づきさせられます。

そしてカズマが自分の気持ちをみんなに打ち明けたとき、そのときこそがカズマにとっての「幸せ」だったと、私は感じています。

私はそんなカズマのような「幸せ」をたくさんの人に経験してほしいと願っています。

少しでも、たくさんの人に何かを与えられたのならば光栄です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

しあわせゆき №49

 そして駅長さんはその部屋のいすにカズマを座らせた。そして駅長さんは向かい合わせになるようにいすに座った。
「別に怖がることはないよ。」
にっこりと駅長さんはカズマに言った。カズマがあまりにも弱々しく見えたのだろう。けれどそれも仕方がない。カズマは確かにおびえていたのだから。
「私はここにいる住人とは少し違う。いろんな人と接しなくてはいけないからね。」
そしてそうも続けた。
「元の世界へ戻る方法を教えてあげよう。今日の夜、君の住んでいた世界からここへと君が来たときのように電車がやってくる。そのときにこっそりと電車の中に入るといい。電車は君がいた世界に向かうはずだからね。」
そして駅長さんはそんなことも言った。あまりのもあっさりしていたので、カズマは少しびっくりしてしまった。
「どうして、普通にそんなことを教えてくれるんですか?」
ついついカズマはそんなことを聞いてしまった。
「私はしあわせゆきの駅長ですから。」
すると駅長さんはそう答えた。
「あなたはいいんですか?」
そして駅長さんは今度はカズマにそう聞いた。
「はい。幸せを見すぎて、悲しくなりました。」
するとカズマはそう答えた。すると駅長さんはにっこりした。
「もし、僕がこの世界を離れたとしても、誰も悲しむ人はいない。それほど気軽なことはないのかもしれない。けど、駅長さんは悲しんでくれませんか?誰かに悲しんでほしい・・・。」
そしてそう続けた。カズマには、強い意思があった。駅長さんはにっこりとうなずいた。
「あなたのこの世界での唯一の幸せを見届けます。」
駅長さんは、いつまでもにっこりとしていた。
 そしてその日の夜。カズマは駅のホームで電車を待っていた。絶対に電車が来るという確信はしっかりあったので、とてもどきどきうきうきしていた。電車に乗っている駅長さんは、どうやら帰りはものすごく油断をしていて相当なことがない限り、客用の車両には見向きもしないという。そんな「しあわせゆき」の駅長さんの情報が、なおもカズマを元気付けた。
 そして電車は来た――。カズマはその電車に乗った。あの時と変わらない風景、あのときの思い出――、いろいろなことを考えてしまう。一体今、三人はどうしているのだろうか・・・・・・それはカズマには予測不可能なことだった。

 時は過ぎる、何もかも変わる――、例えそれがどんなことであろうとも、それを変えることがいいことか悪いことかなんて・・・分からない。

 カズマはいつの間にか電車の中に乗っていた。その日はまるで、あの日のようだった。カズマの乗っていた電車は、次でお父さんの会社の近くの駅に止まるようで、アナウンスが流れていた。カズマに、これから何が起こるのかは、今は分からない。けれど、カズマはきっと、どんなことがあっても乗り越えていけるだろう・・・・・・「幸せ」を知っているのだから・・・・・・。

              終わりend

| | コメント (2) | トラックバック (0)

しあわせゆき №48

 カズマはそしてその日、何とか部活も終え家へと向かった。電車の中で、何かとても居心地の悪い何かを感じた。学校にいても、みんなずっと楽しそうで、ずっと笑っていた。しかられててもしかっていても、どこかには絶対に笑顔があった。逆切れする人も、イライラしている人もいなかった。何があっても、みんないやな思いをしていなかった。しかし、カズマは違った。そんな場所に、何かを感じていた。
 「お帰り!」
家にカズマが着くと、すぐにお母さんが玄関へとやって来た。とっても嬉しそうだった。
「ただいま。」
カズマは何事もなくそう交わす。
「カズマ、あのね!今日ね――!」
そしてお母さんは元気よく楽しそうにカズマに話をし始めた。とってもとっても楽しそうにだ。カズマは、そんなお母さんの姿を初めて見た。それがどことなく寂しかった。カズマのお母さんはカズマが小さいころからよく一生懸命に動く人だった。理由はよくカズマには分からなかった。けれど最近、お母さんが仕事場での部長のお気に入りで、やめたくてもやめられない立場にいることに少し気づいてきたころだった。しかし、どちらにしても今の時期は働かなくてはならない。そんな現状だった。もしかしたらこの世界なら、借金をしてもどうにもなるのかもしれない。
 カズマはそのお母さんの話を聞いてから、お風呂に入った。そして体を洗っているとき、ふと鏡を見た。幸せそうじゃない自分が、今目の前にいた。
「ねえ、助けて!」
すると急にそんな声がした。カズマはびっくりして辺りを見回した。しかし、誰もいない。それどころかその声はどうもカズマの声に似ていた。
「ここで生きたくない・・・・・・。」
そしてそう続くその言葉。カズマがふと気がつくと、鏡の自分が勝手にそう話していた。カズマはびっくりして鏡に顔を近づけた。それも格好がずいぶんと違う。ただの私服だ。
「君はそこで生きるべきじゃない。自分が言っているんだ。一緒に入れ替わろう。一刻も早く。」
すると鏡の中のカズマはそう言った。
「あなたは・・・・・・?」
何も分からないため、カズマはそう聞いた。
「今までおまえが生きていたところで生活をしているカズマ。」
すると鏡の中のカズマはそう答えた。
「えっ?」
あまりのことにカズマはびっくりした。けれどこれは、一体どうなっているのだろう。生活している世界が変わると、こんなことが実際に起こりえるのだろうか。
「今から、今から入れ替わってほしい。・・・だめ?」
鏡の中のカズマがそう言う。
「ど、どうやって?」
カズマは慌てて聞く。すると急に鏡が曇ってしまった。カズマは慌てて鏡をこすった。しかし、するとさっきのカズマではなくこの世界にいるカズマがうつった。
「どうしよう、なんで・・・。」
カズマの中で、どうしようもない気持ちが心の中を渦巻いていた。けれどここでいるべきではない。そのことだけがはっきりと分かった。
 そしてカズマはお風呂から出た後、どうもすっきりしなかった。自分の部屋で閉じこもって、何をするわけでもなくボーっとしていた。カズマ自信、よくはっきりは分からないのだが、どうも何かを考えていた。
 そして――。
「出かけてくるから。」
カズマはそう言い、家を出た。服もしっかり着替えて、準備は万端だ。もしかしたらお母さんは気づいていなかったかもしれない。しかし、カズマには関係なかった。そんなことで、ここにいるお母さんは怒らないことを知っていたからだ。
 そしてカズマはそれから、駅へと向かった。もう九時を過ぎていて、いつもカズマが学校の行き帰りに乗っているときとは少し様子が違った。
 それからカズマが向かったのは・・・駅長さんのところだった。駅長さんはニコニコと改札口付近に立っていた。
「あのぉ・・・。」
カズマは思い切って駅長さんに話しかけた。もちろんここまで来たときにずっと一緒に電車に乗っていたあの駅長さんとは違う。
「どうしたんだい?」
にっこりした顔で駅長さんは言った。カズマには勇気がほしかった。こんな世界で、こんなことを言ったらどうにかなってしまうんじゃないかと。
「自分の生まれた世界に戻るにはどうやって行けばいいんですか?」
カズマは思い切ってそう言った。そして不安そうん顔をした。駅長さんは困ったような顔をしている。(やっぱりだめなのか・・・?)と、カズマの中で不安がよぎった。
「こっちへ来たまえ。ここじゃ話せることじゃないよね。」
すると駅長さんはそれからしばらく経ってからそう言った。駅長さんにはもちろん笑顔があった。そしてカズマは駅長さんにとある部屋へと案内された。

           つづくshine

| | コメント (0) | トラックバック (0)

しあわせゆき №47

 カズマはそして次の日、いつも通りに学校へと向かった。カズマのお父さんは無事、昨日は仕事から帰宅してきた。どんどんと動く電車。どんどんと近づいていく学校。なんだかとっても怖かった。いつも通りの学校がまっているのだろうか、それともとんでもない予想外の光景が待っているのだろうか――、怖くて怖くてたまらない。手がぶるぶる震えているのも分かった。そして、どうにかなってしまいそうな自分が居た。カズマには――。
 そして実際に行ってみると――。
「おはようカズマ!」
「おはよう!」
そんないつもの友達がいた。
「おはよう・・・・・・。」
なんとなく元気なさげにそうカズマは答えた。
「んもう元気にしてたかぁ!」
「おれ今日宝くじ当たっちゃってさぁ!」
「みんなで胴上げしてたんだぜ!」
友達の二人が口々に言う。けれどカズマは、あまり笑顔にはなれなかった。作り笑いで、二人に返した。
「おれ、この前のテスト百点だったぜ!」
「おっ、すげー!!」
楽しそうに二人はそう自分の幸せをしゃべっている。カズマの今まで見てきた二人だったら、こんな話、絶対になかった。今までカズマのいた場所ならば、宝くじが当たったといえば嫉妬されていただろう。テストが百点だったとしても。きっと周りから、愚痴られていただろう。けれど、今は違う――。
「カズマぁ、カズマなんかあったぁ?」
笑顔で一人の友達はカズマにそう聞いた。その顔は、笑顔であふれていた。しかし、カズマはそれほどでもなかった。
「そうだな・・・・・・お母さんと晩御飯食った。」
冗談っぽくカズマは言った。少し、カズマは無理をしていた。
「おぉ!よかったじゃん!」
「ばんざいだな!」
けれど友達の二人は、まともにその話を受けた。カズマは気づいてほしかった。自分が元気がないことに。しかし、二人はそれに触れようともしない。きっと、この世界では触れてはいけないのだ。幸せな世界のままでいるためには。または、カズマ以外の人間にはこんなカズマの気持ちなんて分からないのであろう。
 そしてその日の朝、担任の先生はこんな話をした。なんと、同じクラスの宮元が、転校をするというのだ。どうやら相当遠いところに引っ越すらしい。理由はお父さんの仕事の都合だという。
「宮元!元気でなぁ!」
「次の学校でも上手くやれよー。」
「おぉ、それはいい!」
その後の休み時間、同じクラスのみんなはそう話していた。けれど誰も悲しむ人はいなかった。まるで他人事のように笑顔で話しかけている。みんなの一言一言が、まるで他人が言っているようにカズマには聞こえてしまう。(これが本当に・・・・・・「しあわせ」?)と、カズマはふと思ってしまった。きっと宮元も、何も悲しむことなく他の学校に行ってどんなことがあろうと楽しくやっていくのだろう。

                つづくsweat01

| | コメント (0)

しあわせゆき №46

 カズマはふときがつくと、電車の中にいた。さっきとは違う、電車の中――、何がなんだか分からなくなってカズマは狂ってしまいそうになった。
「次は終点です。」
そんなアナウンスが、電車の中に響きわたる。電車内にはたくさんの人がいて、扉に近づいていく人もいれば、荷物を持って立ち上がる人もいた。そしてカズマはその中で、ただただ電車の中で立っていた。
 そしてカズマは、駅へと降りた。そこはいつもよく見る、カズマが学校帰りに降りる駅だった。いつもと何も変わらず、カズマは駅へと降りたのだ。しかし、何か物足りないようなものを感じる。なぜなのだろう。一体ここは、どこなのだろう・・・・・・。そしてカズマが最終的に来た場所は、自分の我が家だった。
 カズマは恐る恐る家の中に入った。もしかしたらお父さんは今、火事に合っているのかもしれない。もしかしたら、家には誰もいないかもしれない――いろいろな思いが心をよぎる。一体ここでは今、何が起こっているのだろう?
「お帰り、カズマ。」
するとそんな声がした。パッとカズマが玄関の奥を見ると、にっこりとしたお母さんがそこに立っていた。カズマのお母さんは働いていた。だからいつもカズマは家に帰ってもまともな迎えはなかった。お母さんがいたとしても、慌しく別れてしまうし、ゆっくり話している暇もなかった。なのにあの余裕な顔は何なのだろう?いつもの慌しくしている姿はどこにもないのだ。一体なぜ――。
「ただいま・・・・・・。」
「何うかない顔してるの?早くご飯にするわよ。」
「うん・・・・・・。」
カズマのお母さんは、仕事に行く様子はどこにもなかった。そのことにカズマはポカーンとしてしまった。いつもとは違う。それが分かった。
 カズマはそのとき、自分が「しあわせゆき」についてしまったことを通解した。
 カズマのお母さんは、それからずっと家にいた。とても仕事をやっている人には見えないほどだった。
「お母さん、仕事は?」
恐る恐る夕食後、カズマはお母さんに聞いてみた。すると・・・・・・、
「やってないわよ?急にどうしたの?だって、寂しいじゃない。」
するとそんな答え。確かに寂しい。けれどそんな問題ではないのではないだろうか?カズマは習い事とかでお金がかかる存在だ。部活だけでも結構な費用がかかった。今までカズマが生きてきたところのお母さんは、それでとてもせっぱつまっていた。なのに――。この世界に来てカズマは、初めてお母さんが仕事をしていて寂しいと感じているだなんて知った。
「何かあった?もしかして仕事したいの?」
カズマのお母さんはそう心配そうに聞いた。カズマは慌ててそんなことはないと言っておいた。しかし、さすがしあわせな場所。どうやら悪いように考える思考はこの世界の人にはないらしい。

             つづくmoneybag

| | コメント (0)

しあわせゆき №45

「き、君たち!?」
シュンの突進の勢いで扉はなんと倒れてしまった。そしてその扉の向こうには、あの駅長さんの姿があった。あまりにも慌てすぎている。その車両の中はどうやら一番先頭のほうのようで、操縦ができるようなシステムがしっかりあった。そして目の前にあるガラスの窓の向こうは不気味で何があるのか全然想像できないような真っ暗な光景だった。
「どうして入ってきた!入ってくるなと言ったのに!!」
駅長さんはこんなカズマたちに対してものすごく怒っている。その様子は三人が少しおびえてしまいそうな、足がすくんでしまいそうなぐらいの怖さだった。しかし、今の三人にはそんなことでおびえている暇などなかった。早くしなければ、何もせずに「しあわせゆき」へと行ってしまう。
「シュンさん!これが普通の電車と同じだったら、あそこを引けば何とかなします!」
すると急にコウヤがそう言った。そしてコウヤの目線のほうには何かひくものがある。駅長ははっとしたかのように三人を見た。
「おまえら、一体何をする気だ・・・・・・。」
そして青ざめたように駅長は言った。その姿には冷静さがなく、今まで三人が見てきた駅長さんとは大違いだった。
「おれらは自分たちの生きてたところに帰るんだ!」
するとシュンはそう言った。すると駅長さんが眉間にしわを寄せた。
「な、なんということを・・・・・・この私が君らを幸せにしてやるというのに・・・・・・。」
駅長さんの口は、震えていた。けれどシュンはそんなことお構いなしというかのように、あの引くものに手を伸ばした。
「やめろぉ!!」
駅長さんは大きな声でそう言った。
「いっけー!!」
シュンは大きな声でそう言い、引いた。
 すると、綺麗な光が電車の中を包んだ。みんなびっくりして目をつぶった。
「ふっ、ちょうどよかったようだな。しあわせゆきの駅にちょうど止まったようだ・・・・・・。」
そしてカズマには、そんな駅長さんの声が聞こえたような気がした――。

| | コメント (0)

しあわせゆき №44

 そしてそれから、三人はいろいろと考えた。このままではそのまま「しあわせゆき」についてしまって、もう今まで生きてきた世界には戻れなくなってしまうだろうということ。駅長にはもう監視されているような状態だろうということ。ここで話していることももしかしたらばれてしまっているかもしれないのだ。後、隣の車両に行く方法、どうやって戻ればいいのかということ、謎はたくさんあるけれど、やらなくてはならないことはたくさんあるのだ。
「ここで考えてても意味ねえ。さっさと隣の車両に行こうぜ。」
シュンはそう言い、隣の車両へと続く扉のほうへと近づく。
「ちょっと待ってくださいよ。もしかしたらそうすれば駅長さんからは何がどうなるのか想像がつかないかもしれません。けれどこそれは大胆すぎですよ。」
そんなシュンに、コウヤは慌ててそう止めた。確かにそれはそうだ。けれどどうすればいい?
「おれたち、こんなにも行きたくないのに、どうして行かせようとするんだろう・・・・・・。」
思わずカズマはそうつぶやく。「しあわせゆき」は資格がある人だけ行けれる。けれどこの三人はもはや、失格とも言えるようなメンバーではないだろうか。
「だからって帰れそうにないだろおれたち。」
シュンがあきれたようにそう言う。――確かに。
「よし、乗り込むぞ!しっかり頭使って動くんだぞ!」
「おぉ!」
そして三人はそう交わすと急に、隣の車両へと続く扉へ突進したのだった!

             つづくimpact

| | コメント (0) | トラックバック (0)

しあわせゆき №43

「そういえば、カズマさんはどうしてこの電車に乗っているんですか?」
すると急にそういえばというかのようにコウヤは言った。なんだかとってもカズマにとってどきどきするような視線が、二人から向けられる。何を答えればいいのか、何が答えなのか――カズマには全く分からなかった。
「ただ、僕は・・・・・・。」
そしてカズマは言いかけた。少し頭がトンチンカンになってしまって、その続きが上手く言えるか自信がない。けれど二人は静かにカズマを待っている。二人はしっかり自分に気持ちをぶちまけてくれたのだ。そんな二人に、甘えなくていいわけがない。はっきり甘えるんじゃない。分かり合うんだ・・・・・・!
「今の生活が・・・怖かった。」
カズマはボソッとそう言った。けれど今まで、カズマが不安を感じながら生きてきたのは・・・・・・確かだった。
「みんな普通に愚痴とかもこぼせて・・・・・・それで傷つく人たちだっていて・・・・・・それがつらくて、怖くて。分かってほしい親たちには、おれのこと全然振り向いてもらえてないような気がして――孤独で、ずっとこんな社会に振り回されて我慢してきたような気がしちゃって・・・・・・そんなこと考えて自分は被害者みたいな思考を勝手にしちゃってるもんだから、家族だって友達だって普通にいるのに・・・・・・社会に押しつぶされそうになってた・・・。」
カズマは自分が言っていることがよく分からなかった。これじゃまるで思い込んでいやな思いしてるだけの人間ではないか。二人よりも全然つらい思いをしていないただの――。こんなの二人とはカズマは仲間はずれだ。カズマだけが幸せものだ。カズマは何を言われるのか、怖かった。
「それってさぁ、一番つらいんじゃねえの?」
すると急にカズマにふっとそんな声がした。それはシュンだった。シュンはカズマがそっちを向くと、にっこりした。
「だってさ、それは伝えにくいつらさじゃん。おれのはみんなが聞いたらすぐ同情してくれるような内容だったかもしれない。けどさ、大事(おおごと)なものに不安を抱いちゃうことって・・・・・・つらいよ。おれは親には捨てられても、心強い兄妹がいるからさ。」
シュンはそう話を続けてそういうと、カズマの頭をなでた。そのときカズマは初めて人に助けてもらったような気がした。人生の中で、一番支えられるようなそんな言葉だった。
「僕だって、しっかり誰かに話せば何とかなるような内容ですから。話せば簡単に助けてもらえるかもしれない。今この電車で、初めて学べたような気がします。」
そしてコウヤもにっこりした。
「ありがとう。」
そしてカズマは大きな声でそう言った。
「おまえこんなに笑顔なの初めてじゃねえ?」
「そういえばさっきまで僕たち、カズマさんを振り回してましたね・・・・・・。」
「そ、そんなことないよ!いろいろと分かってよかったよ!!」
「そうやってまたぁ。」
「カズマさんはそういう性格なんですね・・・・・・。」
「そうなのかも。」
そして三人はそう交わすと、楽しくわいわい騒いだのであった。

           つづくscissors

| | コメント (0)

しあわせゆき №42

「なぁ、これっておかしくないか・・・・・・。」
すると急にシュンは言った。
「おれら、しあわせゆきに行っていいのか?だってさぁ、おれらはいろいろあってこんな性格になれたんだぜ。っていうかなんというか・・・・・・おまえらはさぁ、幸せがそこにあればそれでいいのか?」
そしてシュンはそう続ける。二人は、少し考え込んだ。幸せって、そんなに楽しいものなのかを。幸せがいいものなのかを。幸せってなんなのかを――。そして二人は決意した。
「別に僕はいじめられたって耐えられる。そんな弱い人間じゃない。」
「おれだって、例えどんなことがあろうと今のままでも十分幸せだからな。」
けれどカズマだけ、そんな二人の言葉に続くことができなかった。どうして自分がここにいるのか、具体的な答えがなかったからだ。もしかしたらこれで戻ったら、カズマのお父さんは死んでいるのかもしれない。けれど、そんなことが理由でカズマはここにきているのだろうか――それの理由は多分違う。もっともっと違うことで何かあるはずだ。それがなんなのか、具体的なものがない。別にカズマはいじめられていたわけでもない。また、兄弟をがんばって支えてきたことだってないのだ。友達関係に食いもない。自分が何でここにいるのか、どうして資格があるのか、自分では分からなかった。自分は、行ってしまったアユコよりもここにいる価値なんてないんじゃないのかとも思うほど――。
「カズマ、おまえはどうなんだよ。」
シュンがカズマに聞く。
「・・・・・・。」
カズマは答えられなかった。
「カズマさん・・・・・・?」
そしてコウヤが聞いても、
「・・・・・・。」
カズマは答えられなかった。

           つづくscorpius

| | コメント (0)

しあわせゆき №41

「そうだったんですか・・・・・・。」
あっけにとられたようにコウヤは言った。シュンはずっと、親なしで兄弟達を支えてきたのだ。なのに急に「しあわせゆき」へ自分だけ向かっていて、さぞかしいやな思いをしていただろう。
「さっき、何が見えていたの?」
カズマは恐る恐るシュンに聞く。するとシュンはすんなり言った。
「みんなが死んでいくところさ・・・・・・もう安心して向こうへいけるぞって意味だろうけどな。」
シュンは少しあきれていた。
「何か誤解をしていませんか?」
すると急に駅長のそんな声がした。どうやら電車内で放送のように流しているらしい。
「君たち、もしかしてしあわせゆきに自分たちはいないとでも思っているんですか?」
駅長の言葉――あまり理解しがたいものだ。一体それはどういうことなのだろう。三人ともスピーカーのほうに目をむける。
「君たちは今、しあわせゆきのほうで暮らしていた君たちと、入れ替わろうとしているだけなのですよ。」
そして駅長はそう続ける。と、いうことは――?
「つまり、しあわせゆきに住んでいた君たちは、今君たちが生きていた世界に向かっている。君たちがしあわせゆきに向かうようにね・・・・・・。」
三人は少しゾクッとしてしまった。「しあわせゆき」にも自分たちは住んでいて――つまり自分は二人いて・・・・・・。
「なので親が心配することだって、何もない。ただ生きている世界が変わるだけ。安心して、しあわせゆきへ向かえばいいのです・・・・・・。」
そして放送は途絶えた。そして三人がそのことで安心したわけでもなかった。今までよりも、もっともっと複雑な気持ちになっただけだった。

              つづくkaraoke

| | コメント (0)

より以前の記事一覧