長野かおり

はじめに

 長野かおりは、成績もよく、運動神経もいい。そして、性格もいい――とても人気者。いつもみんなにしたわれ、信頼され、今となっては学年で知らない人、いや、この学校で知らない人はいないかもしれない。それほどすごい子です。けれど長野かおりが、一人だけとは限りません。ここにいる長野かおりは、ここにいる長野かおり。長野かおりという一人の人間にしか過ぎません。何かが同じだから――例えば名前が同じだから・・・・・・同じような人間ということは、ないんです。多分この話は、それをものがたってくれると思います。

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転校生は不思議な子 ①

 「かおりちゃん!」
「どうしたの?」
かおりはいつも通りに教室でそうしゃべっていた。相手は親友の倉岡桜(くらおかさくら)だ。二人はもう小学校からの友達で、今まで四年間何のもめごともなく仲のいい親友同士だ。
「今日はテストがあるんだよぉ。」
倉岡桜はいやいやそうにそうつぶやいた。今日の二時間目は国語のテスト。倉岡桜はテストは好きじゃない。
「大丈夫。この前のとこより簡単みたいだし……。」
かおりはそう答えた。それは本当のことだった。かおりにとって今回のテストは全然簡単そうだったので勉強することもなかった範囲だった。
「九十点代なのに、桜ちゃん弱気すぎるよぉ。」
かおりは苦笑いでそう言った。
「な、何で知ってんの……!」
倉岡桜はかおりにテストを見せることはない。第一人に見せるような大胆な子じゃない。なのになぜかかおりは知っていた。そしてにんまりしていた。倉岡桜はたまに、こんなかおりに不安を抱くことがある。
「そういえば、転校生が来るんだってね。楽しみだね。」
かおりはそんな中、急に話題を変えた。そう、今日は転校生が来るのだ。相当なうわさが広がっている。
「男子かなぁ……男子がうわさしてたぐらいだし。」
桜はそう答えた。なぜかこの話題は、男子が先に広めだしたものだった。
「ううん、女子だよ……。」
かおりが真剣な目でそう言った。倉岡桜にはそのかおりの自信の意味が分からなかった。多分勘……またそんなことを言い出すかおりにも何かを感じてしまう倉岡桜。
「私、男の人に縁がないんだ。おじいちゃんは私が生まれてすぐ死んじゃったし、お父さんは浮気してたし……。」
かおりはガクッとしてそう言った。そう、かおりの祖父は生まれてからすぐ死んでしまい、父親は浮気をしていたというとても大変な家庭というか……なぜか男に恵まれていないのだ。
「でも、女の子がいいよね。」
「そうだね!うん!」
そしてチャイムが鳴ってしまった。二人は慌てて席に着いた。すると先生が教室に入ってきた。
「今日は転校生を紹介します。」
永島田先生(ながしまだせんせい)はそう言った。すると教室に一人の女の子が入ってきた。ポニーテールで、きりっとしてて、おまけに目と口がでっかくて――。
「長野かおりさんです。みんな仲良くしてあげてね。」
先生はそう言い、黒板に「長野かおり」と書いた。かおりはびっくりした。漢字もひらがなも全く持って同じ名前の女の子が、前で立っていたのだから。他のみんなだってびっくりして、シーンとした間があいてしまった。
「かおりさんは長野さんの席の隣ね。」
永島田先生がそう言った。かおりはビグッとした。かおりに転校生の子の視線が来た。もしかしたら怒っているんじゃないかと感じた。けれど長野かおりという転校生は堂々と長野かおりの隣の席にやってきて、座った。
「よろしくね、私長野かおり……。」
かおりがそう言うと、もう一人の転校生のかおりが、かおりのほうをにらんだ。かおりはビグッとした。もしかしたら悪いことをしているんじゃないかと感じた。
「何よ!これは私の名前みたいないい振りじゃない!長野かおりって言う名は私のもの   よ!」
転校生のかおりは怒鳴った。つまりかおりは怒られた。結構きつそうな転校生のかおり……実にきつそう。かおりは性格が合わない子だと判断した。しかし、隣の席だ。このまま仲の悪いまま終わるわけにはいかない。
「ご、ごめんね……。」
なので謝った。すると……。
「誕生日は?」
なぜかかおりは誕生日を聞かれた。なので仕方なく普通に答えてみることにした。
「5月1日……。」
すると転校生のかおりの顔が一変にしてもっと怖い顔になった。
「何言ってんの!それは私の誕生日よ!!」
そしてそう怒鳴った。なんとこの二人は誕生日が同じだったのだ……。
「ご、ごめんね……。」
そしてかおりはまた謝った。
「まあ血液型は同じでも許してあげる。」
そして転校生のかおりはそう言った。なのでかおりは安心してこう答えた。
「A型だけど……。」
するとまた転校生のかおりの顔が一変にして変わった。
「それはこっちのセリフよ!」
「えっ!」
「何?私がA型じゃないような顔して!」
「ごめん……。」
ということで血液型も同じだったということが判明した。
「いぃい?私は謝ってほしいわけじゃないの。私は理由を聞いてるの!」
怒らないとは言ったが、やっぱり転校生のかおりは怒った。
「理由を言いなさいよ!理由を!」
そしてかおりに問いただした。
「く、口が勝手に……。」
なぜかかおりが思い出して言った言葉は、そんなくだらないものだった。かおり自信、自分がばかばかしくてしょうがなかった。そして段々に転校生のかおりの顔が恐ろしくなっていく……。
「はぁ?何それ!!私のお父さんみたいなこと言わないでよ!責められると動揺してろくでもないこと言うんだから!」
そしてそうまた怒鳴る転校生のかおり。
「私、かおりちゃんのお父さんと似てるんだね……。」
「そういうもんだいじゃなぁい!それに気安く「かおりちゃん」とか呼ばないで!」
「じゃあなんて呼べばいいの?」
「かおり……様。」
転校生のかおりはもう、かおりにかんかん。もう転校生のかおりちゃんの怒りはとまらない。しかしさすがにかおりも転校生のかおりを「かおり様」と呼ぶのには躊躇する。けれどこのままいやだなんて言ったらとんでもないことが起きそうだ。
「私はかおりちゃんをかおりちゃんって呼ぶから……。」
かおりは勇気をもってそう言った。転校生のかおりちゃんは真剣な目でかおりをじっと見ている。
「かおりちゃんは私のことかおりって呼んでいいよ。それで……どうかなぁ。」
かおりは恐る恐る転校生のかおりを見ながらそう言った。なかなか転校生のかおりの返答がない。転校生のかおりはいろいろと考えていた。「かおりちゃん」なんてそうめったに言われたことがなかったので、いろいろと考えた。その結果――。
「まあいいわそれで。」
と、答えてしまった。「かおりちゃん」だなんてそうめったに言われない。もしかしたらいい気分なのかもと感じたのだ。それが実際、どうなのかは分からないのだけれども……。
「二人とも、にぎやかいわよ。」
すると急にそんな声が聞こえた。永島田先生だった。そして二人は教科書で頭を叩かれた。するとかおりちゃんの顔がかおりへと向けられた。
「あんたのせいよ!あんたのせいで怒られたんだから!」
「ご、ごめんなさぁい!」
まあそんなわけで、二人は仲良くなった?のであった……。
 そして休み時間。かおりはかおりちゃんに仲のいい倉岡桜を紹介することにした。
「桜ちゃんだよ。いい人だからよろしくね。」
かおりはそう倉岡桜をかおりに紹介した。倉岡桜はその紹介になんだか不安を抱いた。が、まあいつものことなので何とか乗り切った。しかし、かおりちゃんの反応が余りよくない。それっきりかおりは何も言わず「何とか言って」と言うようにかおりちゃんに視線を送った。するとかおりちゃんはやっとこさというようにやっとのことでこう言った。
「かおりの友達にろくなやついるの?」
それもとんでもなく上目線だった。
「ガビーン!!」
倉岡桜はあまりの悲劇に落ち込んだ。自分のせいでかおりが馬鹿にされているように思えた。

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転校生は不思議な子 ②

  そして放課後――。
「かおりちゃん……。」
倉岡桜がかおりに話しかけようとしたとき、もうかおりの姿はなかった。倉岡桜はもう、遅かった……。
 その頃かおりはというと……。
「速くしろ!同級生のくせにこんなにも歩くのに差があるだなんて!!」
「ごめんなさぁい!」
そうやって廊下を歩いていた。
「どうして私、ついていかなくちゃいけないの?」
かおりは一生懸命追いつきながら、息切れしながらもかおりちゃんに聞く。
「あんたそんなことも認識してないわけぇ!?」
かおりちゃんはそう言った。けれども歩く速さが変わったわけでもなく、かおりは仕方がないので走った。かおりちゃんの歩く速さは歩くにしてはとても速かった。けれどもかおりちゃんの反応のほうがかおりにとってびくびくしてしまい、歩く速さよりも何かを感じた。
「えっ、えっ……うぅん?」
かおりはかおりちゃんによく分からないような反応を返した。するとみるみるうちにかおりちゃんのイライラが高まっていくのが伝わってくる。くるくるとかおりはどきどきしながらしかられるのを待っていた。
「私と同じ名前なのよ!責任取らなきゃいけないに決まってるじゃない!責任とって私に付き合うの!分かったぁ?」
かおりちゃんはそう言った。と言うより怒鳴った。かおりは理解できたので慌ててうなずいた。しかし顔は少し固まってしまった。かおりちゃんはほんとに分かったのかと疑うような目でかおりを見た。しかしすぐ目線を変えた。
「ねえ、どこ行くの?」
かおりは聞いた。
「どこに行くにしたってかおりはついていかなくちゃいけないんだから!だ・か・ら、いう必要もない。」
しかしそんな返事がかおりちゃんから返ってきた。かおりはどこへ行くのかも分からず、かおりちゃんに続いて昇降口を出た。かおりちゃんは転校したばかりである。そこまでこの町のことを知っているとは限らない。それはそれで心配だった。 
 そして段々に人気がないところへとかおりちゃんはずんずんと歩いて行きそして――。
「ここここ。」
かおりちゃんはとあるところで立ち止まった。そしてとある空き地を指差した。かおりは唖然とした。そこはとてつもなく危ないところ……。
「かおりちゃん、ここは危ないんだよ。お母さんが行っちゃだめだって言ってたし……。」
かおりは空き地の中に策を登って入ろうとするかおりちゃんにそう言った。そしてかおりは顔を真っ青にした。ここはかおりは入りたくなかった。すると、かおりちゃんはすんなりと策から降りた。そして不思議そうにかおりを見た。これは一体、どういう意味なのだろう……。
「そんなこと知ってるし。野良犬がいるだけでしょ?」
平然とかおりちゃんはそう言った。かおりはもっと青ざめた。この空き地はものすごく凶暴な野良犬のたまり場なのだ。なので小学生は近づいては危ないということになっている。けれど……。
「じゃあ……。」
「こらしめるよ。こんな人の空き地で、人も甘く見られたもんよ。」
「えっ……。」
「いやなんて言わせない……。」
「えー!」
「速く行くよ。」
二人はそう交わした。そしてかおりちゃんはさっさと策に登る。たった五十メートルほどの策だ。簡単にまたげるぐらいはできる。かおりも仕方なく……策の向こうへ。
 そんな時!すぐに何かの視線を感じた!
「ガルー」
そんなうなり声。二人が恐る恐る後ろを振り向くと、牙をむき出しにしている野良犬が、怖い顔で二人を見ていた。二人とも顔色が真っ先に悪くなった。後ろにも数ひきいる。怖い犬が……。
「一、二……かおりちゃん、十二ひきいる。」
かおりはかおりちゃんにそう言った。
「私しーらない!」
かおりちゃんはそう言った。
「えー!」
かおりは慌ててそう言った。もうかおりちゃんは他人のふり。どうやら自分の犯したミスの深さは分かっているらしい。しかし、この野良犬たちは多分、自分の縄張りに勝手に入ったこの二人を許すわけがないだろう。
「かおり、まさか逃げるって意味知らないわけないよね。今から「逃げる」って言って、理解できなかったりしないよね。」
かおりちゃんはかおりにそう言った。かおりはごくりとつばを飲み、うなずいた。
「逃げるー!」
かおりちゃんはそう言った。そしてパッとすばやく策を登る。そのすばやさときたらもう……かおりも慌てて策を登る。野良犬たちが二人に勢いよく向かってくる!
「速く!」
かおりちゃんはもうすぐに登り終え、かおりを待つだけだ。
「いたっ!」
けれどもかおりは策なんて登ったことがなく、落ちて転んでしまった。ころび方が下手で、足をひどくすりむいてしまった。
「もう仕方ないなぁ。」
かおりちゃんはそう言うと慌ててかおりを背負った。そして一目散に走った。
「落ちんなよ!」
「はい!」
そして二人は野良犬たちに追いかけられた。
「コノチクショー!おめえよばか!」
「ごめんなさぁい!」
二人は何とか野良犬から逃げ出すことが出来たのだった……。
 「だ、大丈夫?」
かおりは野良犬が追ってこないのを確認して下りた。そしてかおりちゃんにそう言った。
「さっきまで言われる側だったくせに、全く……。」
かおりちゃんはぜいぜいと生きを荒くしながらそう言った。そりゃそうだろう。同級生を背負ってあんなにも走ったのだから。するとかおりはふと、かおりちゃんも足をすりむいていることに気づいた。
「かおりちゃん、けがしてる。痛くない?」
そして真っ先にかおりは言った。かおりちゃんは気づいていなかったらしく、すぐに自分の足を見た。そしてみるみるうちに不機嫌になっていった。
「だ、大丈夫?」
かおりは聞いた。すると……。
「んもう!信じられない!!何で?何でこの私があんたと同じところをけがしなくちゃいけないのよ!おかしい!」
かおりちゃんは本当に不機嫌だった。どうやら見てみるとかおりもかおりちゃんも同じところをすりむいている。かおりはかおりちゃんが不機嫌になる理由がなんとなく分かるような気がした。
「あっ!私塾だった!」
かおりはふと思ったことを叫んだ。かおりは今日、帰ったらすぐに塾に行く予定だったのだ。かおりはかおりちゃんと野良犬に追いかけられている場合ではなかったのだ。
「はぁ?別にいいじゃん。」
かおりちゃんは平然とそう言った。かおりちゃんには塾だからなんなのかよく意味が分からなかった。かおりちゃんはたまにかおりのいっている意味が理解していないときがあった。
「あぁ……。」
そしてかおりはかおりちゃんとどよんとした気持ちで家に帰った。
 そして次の日。かおりはいつも通りに学校へと登校していた。そして靴から上靴に履き替えていると、倉岡桜がかおりのところにやってきた。走ってすごく慌てていた。
「か、か、か……。」
倉岡桜はかおりの目の前でそう言った。かおりには何がなんだかよく分からなかったので、首をかしげた。けれど倉岡桜は顔色も悪く、体が震えているので、どうやら体調は悪いようだった。
「保健室行く?どうしたの?頭痛いの?」
かおりは倉岡桜に言った。しかし倉岡桜は首を振った。その意味がかおりには分からなかった。倉岡桜は自分が伝えたいことが全然伝わらないのでショックだった。
「かおり……ちゃんが。」
そして倉岡桜はそう言った。かおりは自分のことを言っているわけではないことはすぐに分かった。しかし、倉岡桜の言いたいことがよく分からなかった。                                   

 

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転校生は不思議な子 ③

 なので理解しないまま教室に入ると――。
「かおり……ちゃん。」
かおりは後ろにある自分の席に座ろうとして、かおりちゃんに目がとまった。そして思わずそう言い、唖然としてしまった。かおりちゃんはムスッとした顔で席に座っている。とても機嫌が悪そうだ。かおりが一応声を掛けたのにもかかわらず、全然反応がない。かおりがどうしたらいいのか分からない状態のとき、倉岡桜はかおりの後ろでおびえていた。
「な、何かあったの?」
かおりは恐る恐るかおりちゃんにそう聞いた。するとゆっくりと怖いかおりちゃんの顔がかおりへと向けられた。どう見てもかおりが悪いような顔をしている。
「あんたが全部悪いのよ!」
かおりちゃんはそう言い立ち上がった。かおりはびっくりして体をビグッとさせた。けれどかおりにはかおりちゃんをこうした覚えはなかった。なんとかおりちゃんの顔は、五つほどのばんそうこうが張られ、とてもいた痛そうだったのだ。いや、痛い……どうやらこれはかおりに原因があるらしい。
「えっ?うぅん?わ、私!?えっ?」
かおりは動揺して意味の分からない反応をした。みるみるうちにかおりちゃんの機嫌は悪くなっていく。それはかおりにも倉岡桜にも分かった。
「このけがが誰のせいか言ってんの!あ・ん・た・の・せ・い!分かってる?」
かおりちゃんは怖い顔でそう言った。かおりは思わずうなずいてしまった。意味を全く理解していないっていうのに……。
「昨日のこと全部じいちゃんに話したらこうなったのよ!もしもあれでじいちゃんの血糖値が上がってじいちゃんが死んじゃったらどうする気だったわけ?あんた絶対じいちゃんに呪われるんだから!」
かおりちゃんはそしてそう付け足した。どうやらこのけがはかおりちゃんのおじいちゃんかららしい。としてもこれはすごい……かおりは自分のどこが悪かったのかあまり理解は出来なかったが、どうやら悪いみたいなのでこれからは気をつけていこうと思った。
「なあ、それっておまえが悪いんじゃないの?」
すると急にいつから横で話を聞いていたのか木林正助(きばやしまさすけ)がそう言った。よく教室を駆け回っている男の子だ。
「何?おまえって誰のことぉ?」
するとかおりちゃんがそう言った。すごく調子に乗っている。ムスッとした木林正助は次にこう言った。
「かおりだよかおり!」
すると……。
「かおり、やっぱあんたが悪いんだってさ。木林だって言ってるじゃん。」
かおりちゃんはそう言った。どうやら木林正助までかおりが悪いと……いや、違う。かおりちゃんがただかおりと同姓同名なのを利用して言っているだけなのだ。が、かおりは真に受けてしまった。かおりは落ち込んだ顔をする。
「長野ちげえからな!だからおまえだってば!」
木林正助は慌ててそう言う。そして木林正助はかおりちゃんを指す。かおりはもうトンチンカンチン。
「おまえって誰ぇ?そこには誰もいないけどぉ?」
かおりちゃんは木林正助が指しているところから場所を横に移動してそんなとぼけたことを言った。
「だからおまえだってぇ!」
「あんた透明人間でも見えてるのぉ?ふっ!」
「あのなぁ!」
それから二人はずっと、教室中を走り回っていた――。
 けれどそれから数日間、かおりちゃんのけがは悪化していった。何をかおりちゃんはおじいちゃんに話しているのか分からないが、普通に毎日のことを話していればこうなるとは感じる。かおりは、自分が止める役目にならなければならないのにやめさせられないことに罪を感じた。

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「転校生は不思議な子」よりあとがき

皆さん、今回は楽しめていただけたでしょうかhappy01

楽しめていただけていたら光栄ですhappy01

今回ではかおりとかおりちゃんが出会うのですが・・・・・・

全く違った二人がなんとか仲良くなれたような状況ですwobbly

皆さんはかおりちゃんのような同級生はいたでしょうかcatface

けれどかおりにはかおりちゃんのような子が必要なようにも感じますcatface

倉岡桜のような存在も必要だと思いますけどねcoldsweats01

まだまだこのお話はこれからなので、どうぞご期待くださいhappy01

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前の席の飯井口君 ①

 「かおりちゃん、やっと顔が落ち着いたね。」
一時間目の半ば、かおりがそう言った。もうあれから何とかかおりちゃんがおじいちゃんにしかられなくなってきたのだ。後はかさぶたがとれれば何とかなるだろう。けれどかおりちゃんはかおりが言った言葉に反感を持った。
「何?私の過去を馬鹿にしてるようなその笑顔!何やっとってぇ?」
かおりちゃんはいつも通りにかおりに怒った。
「ご、ごめん・・・・・・。」
かおりはそして謝った。するとまたかおりちゃんはもっと怒り出す。
「またでたごめんが。全く今の人間はごめんって言えばすむと思ってるんだから教育がなってない!もうこんな人たちと同じにされるぐらいならごめんなんて言いたくない!」
かおりちゃんはそう熱弁した。かおりはこういうときは自分も共感が出来たので、こう言った。
「だ、だよね。」
だが・・・・・・。
「何?ごめんって言えばすむと思ってる人間ってあんたのことでしょうが!そんな人間がこんなことに共感するだなんて信じられない!あんた納得したって反感買うだけよ!」
と、かおりはかおりちゃんに怒られる羽目となった。かおりはまだかおりちゃんが怒る限度があまり分かっていなかったため、まだ怒られることが多々ある。けれど多分、これからもずっと怒られているような気配がする・・・・・・。
「ごめん・・・・・・。」
で、また言ってはならない言葉を発するため・・・・・・。
「またぁ!何度言ったらわかるのよ!」
と、かおりちゃんにまた怒られるかおり。そしてかおりはまたごめんと言いそうになった。しかし、これではらちが明かない。かおりは少し考え込んだ。かおりちゃんは何も言わずかおりを見ていた。しかし、ムスッとした顔が顔に出ていて、安心は出来ない。かおりは早くしないとまたしかられてしまう気がして、フル回転でいろいろと考えた。そしてその結果は・・・・・・。
「す、すまん・・・・・・。」
だった――。
「あんたすまんの意味分かってる?ごめんって意味よぉ!」
かおりの力不足もあり、かおりちゃんは怒った。まあ納得のいく結果だとでも言えよう・・・・・・かおりちゃんは限度がきたのか急に教科書を丸めてかおりの頭を叩いた。
「痛いぃ。」
かおりはそう嘆いた。
「ホント信じられないんだから!」
かおりちゃんはそう言いまだ叩く。
「かおりちゃん、そんなことしてるとおじいちゃんにしかられちゃうんじゃない?」
かおりはそう言った。かおりは少しおどした気にもなっていた。なんてったってかおりちゃんの話だとかおりちゃんにとっておじいちゃんはとてつもなく怖い存在というか――とにかくそんな感じだ。かおりちゃんがおじいちゃんにしかられることを恐れていないだなんてとても思えない。けれどかおりちゃんはにったりした。かおりはビグットした。かおりちゃんの手がやむ気配はない。
「もしかしてこの私を脅そうとしたのぉ?それなら残念だったわねぇ。うちは「怒れるときは叩く」っていう文化があるからぁ。」
かおりちゃんは自慢げにそう言った。かおりおはガクッとした。けれどかおりちゃんの家ならありそうな文化だ。そんなとき、急にかおりちゃんの手がすべって教科書が飛んでしまった。かおりもかおりちゃんもビグットした。そして――前の席の飯井口登馬(いいぐちとうま)の頭に教科書があたった。
「い、飯井口君!」
かおりは慌てて飯井口登馬に話しかけた。飯井口登馬は頭を少しさすりながら後ろへ振り返った。不思議そうな顔をしている。
「ごめんね、大丈夫?」
かおりは心配そうに飯井口登馬を見てそう言った。
「あっ、うん。大丈夫だよ。」
飯井口登馬はそう答えた。
「ホントに?」
かおりは疑うかのようなそれでも優しい顔でそう言った。
「大丈夫だってよぉ。言ってたじゃん。」
かおりが他人事のように言う。元はと言えばかおりちゃんのせいで、でもこうなったのはかおりのせい?で――けれどもかおりは少しかおりちゃんの言葉には納得がいかなかった。けれど飯井口登馬はきょとんとした顔で、かおりはどうしたらいいのやらというような感じだった。
「ごめんね、本当に・・・・・・。」
念を押すかのようにかおりはそう言った。かおりがこのまま大丈夫かと納得のいくような性格ではないのだ。まあ性格なので仕方がない。
「いいよ、僕は。あははははぁ。」
飯井口登馬は苦笑いでそう言った。飯井口登馬は「あははははぁ」が口癖なのである。こんな様子じゃ詐欺にでもあいそうな感じもする。
「飯井口がいいって言ってるならいいだろ?別に教科書当たったぐれいで何分謝罪してんのよ。」
かおりはあきれたようにかおりに言った。
「でもそんなこと言っちゃぁ飯井口君が気の毒だよぉ・・・・・・。」
「いいの!もうこの話は終わり!」
「あははははぁ。」
ということで、この出来事はなんとか解決したようだった――。
 そして次の授業の体育では――。
「今日ドッジボールやるんだよねぇ。」
「私、勘なんだけど・・・・・・桜ちゃんと同じチームになれないような気がするの。」
「ガッビーン!」
と、倉岡桜とかおりは話していた。今日の体育は体育館でドッジボールをするのだ。みんな体操を済ませ、永島田先生をしゃべりながら待っていた。倉岡桜はすんなりとかおりがひどい発言をするので、少しマイナスになり落ち込んでいた。それもかおりに悪意がないようだったので、それもまたある意味落ち込んだ。

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前の席の飯井口君 ②

「でも同じになれるといいよねぇ!」
「う、うん・・・・・・。」
倉岡桜はかおりの呼びかけに「うん」と言ってしまったが、少しかおりのせいでそんな気がしなくなってしまっていた。
「何が同じチームだ!」
すると急にかおりと倉岡桜のところにかおりちゃんが現れた。どうやらまた怒っているらしい。
「ドッジボールっていうのは同じチームになって「やったー」って喜ぶもんじゃないの!分かるぅ?勝って「やったー」って喜ぶもんでしょ!全くそういう考えだから困る。」
かおりちゃんはそうドッジボールを語った。どうやら同じチームになって喜ぼうとしている二人に納得がいかないらしい。けれどもそんなことの何が悪いのか分からないので二人はキョトーン。
「な、何よその顔!じいちゃんだって同じこと言ってたわよ!」
二人があまりにも馬鹿にしたような顔をしているように見えたのか、かおりちゃんは慌ててそう言った。しかし、かおりちゃんのおじいちゃんはあんまり納得する理由にはならないような感じがする。かおりちゃんとかおりちゃんのおじいちゃんが同じ意見を言っていてもおかしくはないし――それで納得していいものか二人にはよく分からなかった。
 そしてチームわけはじゃんけんで負けたか勝ったかで分けた。かおりちゃんは倉岡桜や飯井口登馬とかと、かおりは木林正助とかと同じチームだった。
「桜ちゃんじゃんけんする前に「かおりちゃんとなりますように」って祈ってたもんねぇ。すごいよねえ、神様って。」
かおりが倉岡桜にそう話しかけた。倉岡桜はビグッとしてしまった。倉岡桜はかおりではなく、かおりちゃんとなった、ということは・・・・・・神様はかおりとかおりちゃんを間違えたのだ。神様も困ったもんだ。それともこれはまぐれか、または倉岡桜の祈り間違えか――。
「ガッビーン!」
倉岡桜はそう言いもがいた。
 ということでドッジボール開始。
「桜ちゃん、ごめん・・・・・・。」
ボールは始めかおりちゃんたちのボールになって、それを始めにかおりがとった。そしてその始めのかおりの言葉がこれだとすると・・・・・・。
「ガッビーン!」
倉岡桜は狙われ、あてられた・・・・・・友達として少し切ない倉岡桜。それもボールは思い切りだった。かおりのボールはだてに遅い速さではない。普通の同級生の男子が投げてもおかしくないような速さだ。
「ナイス長野!」
木林正助が大声でそう言った。かおりは笑顔で木林正助に返した。
「けっ、友達あててそんなに笑顔でよくいられるよなぁ。」
するとかおりの相手チームの内野からそんな声が聞こえた。それはかおりちゃんの声だった。二人がかおりちゃんを見るとなんだかいやいやしい顔でかおりちゃんが二人を見ていた。
「おまえいちいちうるせえよ!さっきまであんなこと語ってたくせに調子のいいやつ!おまえなんてかおりにあてられちまうぞぉ!」
木林正助がそう大声で言った。木林正助が少しカチンとくる言葉だったらしい。けれどこれもまたかおりちゃんがカチンと来てかおりちゃんはこう言った。
「何よ!もとから外野であてられることのないあんたなんかに言われたくないね!まさかあてられるのが怖いのかなぁ?」
かおりちゃんのにんまりとした顔。そう、木林正助は外野の中心人物になっていたのだ。もともと木林正助だってすごく上手い。あんなことを言われてまたいらっとしてしまった。
「おまえみたいなやつあてられちまう!」
「はぁ?なんでよ!」
そしてこの二人はずっとそんなことで大声でけんかしていた。この二人はまだまだ仲良しにはなれそうにないようだ。
 そして結局、最終的にはかおり同士が内野に残ってしまった。さすが似たもの同士なのか運動神経はレベルが同じらしい。投げる速さも互角といってもおかしくはないだろう。とることもよけることも互角だと思われる。性格だけが違うのがとても不思議なぐらいである。そしてかおりちゃんにボールが回った。
「絶対あててやる!あんたなんてちょろいもんよ!」
「えぇ!」
という会話の後に、かおりちゃんは投げた。するととっさにかおりはよけた。すると・・・・・・。
「うわぁ。」
そんな声が・・・・・・。
「い、飯井口君!」
かおりは慌てて叫んだ。なんとかおりちゃんの投げたボールが飯井口君の顔面に当たったのだ。それはまた痛い。
「あ~、味方なんてあててやんのぉ。」
木林正助がにんまりとかおりちゃんにそう言った。
「バカ飯井口!しっかりボール見てろ!」
「あははははぁ、僕鈍いからなぁ。」
「全くしっかりやってろ!」
そして飯井口登馬はかおりちゃんに怒られ、かおりちゃんは飯井口登馬をしかった。
 結局このドッジボールは決着がつかずに同点ということで終わってしまった――。
 そしてその日の帰り道。
「何だよ飯井口の野郎!男のくせにろくなもんじゃない!」
かおりちゃんはかおりと歩きながらそうぐじゅぐじゅと怒っていた。
「私、悪いことしちゃったなぁ・・・・・・飯井口君に。」
そしてかおりちゃんの横で歩いているかおりは反省をしていた。
「あっちが悪いんだろうが。かばうな。」
「でも・・・・・・。」
そしてそう交わすと急にかおりちゃんの足が止まった。かおりもつられて立ち止まる。そしてかおりちゃんはボー然と目の前にある何かを見ていた。かおりがそのかおりちゃんの見ている先を見ると・・・・・・犬がいた。
「やべぇ・・・・・・。」
かおりちゃんが青ざめた顔でそう言った。
「どうしたの?」
何も知らないかおりは不思議そうにかおりちゃんに聞く。
「あの犬、今日の朝、石ぶつけてさぁ・・・・・・。」
かおりちゃんはそう答えた。そしてやっとかおりも意味が分かった。そしてかおりちゃんと同じく青ざめた。どうやら野良犬らしく首輪をつけていない。また、とても怖そうな顔をしている――。
「どうする、の?」
かおりはかおりちゃんに恐る恐る聞いた。
「馬鹿は何も分かんないんだな。」
かおりちゃんがそうかおりを馬鹿にした。
「えっ?」
あまり意味を理解していないかおりは聞き返した。そして、
「逃げるに決まってるだろうが!」
かおりちゃんはそう言い走り出した。そしてかおりも慌てて走り出した。
「こっちだかおり!」
かおりちゃんがどんどんと細い道を誘導していく。まだこの町に来てから一ヶ月も経っていないのにかおりちゃんはなぜかこの町の道に詳しいらしく、かおりが知らない道をどんどんと走っていく。
「こっちにでっかい桜の木があるんだ。そこに登れば安心だ。」
かおりちゃんがかおりにそう言った。二人とも息をはあはあしながら走っていく。
「私、木登りなんてしたことないよぉ。」
するとかおりはそう泣き言を言った。
「はぁ?バカじゃないの!!」
かおりちゃんはあきれてそう怒鳴った。と、いうことは・・・・・・もう最低でもかおりは助からないというのだろうか!?
「仕方ないなぁ・・・・・・。」
かおりちゃんはそうボソッと言った。そして・・・・・・。
「誰か助けてぇ!」
と、叫んだ。これで二人とも助かる可能性は高いが・・・・・・いや、低いと思われる。
 そんな時目の前に誰かが!
「あっちいけこの野良犬がぁ!」
そしてその子はそう怒鳴り、犬はしぶしぶというように逃げていった。
「・・・・・・。」
二人ともボー然として言葉がなかった。いや、出なかった。                   「大丈夫か?気をつけろよ?よくあの犬うろうろしてるから。」          その子はそう言った。二人は目を真ん丸くした顔でその子を見ていた。するとその子はなんだか二人が不気味に見えたのか、変な顔をした。               「な、なんだよおまえら。変なやつ。ん、んじゃあ。」              そしてその子は不思議な顔で行ってしまった。                 「うそ・・・・・・。」                            「マジかよ・・・・・・。」                             二人ともびっくりしすぎて体が動かなかった。だってその子は――飯井口登馬だったのだから。二人は、あのただ笑っているようなあの男に、助けられたのだ。それもまるで別人かのような飯井口登馬に・・・・・・。

                                                                                                

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前の席の飯井口君 ③

 次の日――教室では。
「飯井口もやれば出来る男じゃないか!何でもっと速くあぁいうことをしようとしなかったんだよぉ!」
かおりちゃんは教室に入るなり飯井口登馬を見つけるとそう言いニタニタした。飯井口登馬は急に自分のことでかおりちゃんが機嫌がいいので、なんだか変な感じになった。それも飯井口登馬にはそんなことを言われるような覚えはなかった。
「い、痛いよぉ・・・・・・。」
飯井口登馬はそう嘆く。いつの間にかかおりちゃんは機嫌がよすぎたのか飯井口登馬を思いっきり叩いていた。
「だってあんな立派な犬をやっつけたんだからなぁ!」
かおりちゃんはそう言いさっきよりも増して飯井口登馬を叩く。
「僕犬なんてだいっ嫌いだよぉ。」
「うそばっかり言いやがってぇ!」
飯井口登馬が弱音をはいているのにもかかわらず、かおりちゃんは機嫌よくまだ叩く。
「はぁ?飯井口が犬をやっつけただぁ?」
どこからともなく現れた木林正助がそんな会話に首をつっこんだ。
「昨日飯井口に助けてもらったんだよな!なっ、かおり!」
急にかおりちゃんは支度をしているかおりに振る。かおりは慌ててうなずいた。そしてかおりちゃんの顔が自慢げになる。
「マジかよ!」
木林正助がびっくりする。
「何で私のときは信じないくせにかおりのときは信じるわけ?」
「当たり前だろ!」
「なんですって!」
そしてまた二人のもめあいが続く。
「でも僕、覚えてないんだよね。昨日の帰り二人に会った覚えはないよ?」
飯井口登馬がなんだか申し訳なさそうに言う。それには二人はびっくりだ。あれはどう見ても飯井口登馬だったし・・・・・・。
「本人が言ってるってことは人違いなんじゃないのか?」
木林正助が冷静にそう言う。そして考え込む。かおりとかおりちゃんだって変な感じだ。これは・・・・・・ミステリー。
「ねえ、じゃあみんなで試そうよ。みんなで犬に近づくの。正助君と登馬君もいたら、もしもうそでも心強いな。」
かおりがそう提案した。と、いうことで四人は今日の放課後、凶暴な犬に近づいて昨日のようになるかという挑戦をすることとなった。
 そして放課後――。
「確かにここ、僕の帰る道と同じだけど・・・・・・。」
飯井口登馬は不思議そうにそう言った。ここを通っているのならば、かおりとかおりちゃんの帰り道に偶然ばったりあったっておかしくはない。もしかして飯井口登馬はうそを言っているのだろうか?隠し事とか――。
「もしかしてさぁ、その野良犬ってロンのこと?」
木林正助がそう言う。けれど表情や歩き方にだるさを感じる。あまり乗る気ではなかったらしい。面白そうでも興味もないっぽい。
「木林知ってんの?」
けれどかおりちゃんが聞き返す。
「どこの子かと思ってるんだよ。有名だぜ。クリーム色のやつだろ?」
木林正助はそう返す。
「けどあれはロンじゃないんだ。首輪つけてなかったの。」
するとかおりが話しに加わった。ロンという犬は怖い目つきでクリーム色の中型堅だ。この前の犬とそっくりだったが――ロンはとある家に飼われている為、首輪をつけている。しかしこの前の犬はつけてはいなかった。それにロンとは少し雰囲気が違う感じなのだ。ロンとは違ってその犬には右目の上にほくろのようなものがあったのだ。
 そんな時!とうとう、現れた――。
「あっ!あいつはロンの親戚のロサンゼルスだ!」
木林正助が大声で言った。するとそのロサンゼルスは木林正助のほうに目をむけた。こ、怖い・・・・・・。
「ぼ、僕、犬にかまれたことあっていやなんだよね、あははははぁ。」
と、飯井口登馬は一歩一歩ロサンゼルスから遠ざかっていく。
「飯井口!男だろ!びびるんじゃねえ!」
そうかおりちゃんは怒鳴りさりげなく飯井口登馬を盾にする。
「正助君、どうする・・・・・・?」
かおりが冷静に木林正助に聞く。木林正助はいざロサンゼルスを目の前にし、足が少し震えてしまっている。あまり動けるような状態ではない。そしてかくかくとかおりのほうを見た。
「逃げるぞー!」
そして四人は走り出した。それと同時にロサンゼルスも走り出し、四人を追いかけてくる。四人とも死に物狂いで走る走る。
「誰か助けてー!」
かおりはとっさにそう叫んだ。
 すると――。
「またおまえか!どっかいけ!」
あの子が、現れた・・・・・・。
「しょ、翔太郎!」
「あっ、やべっ!」
飯井口登馬が二人・・・・・・?
「どうしてここにいるんだ?」
「最近早帰りだったんだよ。」
「ここは翔太郎の通学路じゃないだろ?寄り道しちゃいけないじゃないか。」
「ご、ごめん・・・・・・。」
二人の飯井口登馬が会話をしている――。
「飯井口が怒ってる・・・・・・。」
「いや、飯井口が怒られてる・・・・・・。」
「怒って怒られてる・・・・・・。」
三人は動揺を隠せなかった。
「あんたたちなんなのよぉ!」かおりちゃんは大声で叫んだ。
 そして二人の話によると・・・・・・かおりとかおりちゃんを助けてくれたのは、飯井口翔太郎という、飯井口登馬の双子の弟だったことが判明した。
 「兄ちゃんは同じ学校に行くと足手まといになるから、俺は私立受験しなさいってお母さんが・・・・・・。」
「僕より翔太郎のほうが受験受かりそうだしねぇ。あははははぁ。」

※前回、打ち方の間違えで一部、分かりずらくなってしまいました。申し訳ございませんでした※

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前の席の飯井口君 ④

平然と話す飯井口登馬と飯井口翔太郎。本当は平然と話してはならないような内容なのだが・・・・・・。
「いるならちょっとぐらい話してくれてもよかったのに。だってきっとみんな飯井口君が双子だなんて知らないよ?」
かおりが冷静にそう聞く。
「あははははぁ。言うの忘れてたなぁ。」
「どうせこんな話、兄ちゃんの恥話だもんなぁ。」
飯井口二人が口々に言う。全くややこしいが、性格が違うせいで分かりやすい。表情とかも明らかに違う二人。それも弟が兄に見えるという・・・・・・ミステリー。
「兄ちゃんほんとに情けないんだから。」
「あははははぁ、そうだねぇ。僕もそんな気がするぅ。」
二人はそしてそんなことを笑い事のように言った。
「しょうがない!登馬のほうはこっちに来い!」
すると急にかおりちゃんは飯井口登馬の腕をつかんだ。そしてぐいっと飯井口登馬を引っ張る。
「あははははぁ、どこ行くのぉ?」
そして飯井口登馬はそう言いながら連れられて行った。
「帰ろうぜぇ。もうこのことははっきり分かったんだしさぁ。」
そして木林正助はそう言うと、さっさと歩き出した。
「でも飯井口君が・・・・・・。」
かおりが不安そうな顔でそう言う。
「いいよ、兄ちゃんなら。」
すると笑顔で飯井口翔太郎が言う。ちょっとかおりは心配そうな顔で飯井口翔太郎を見る。そして似ていると感じる・・・・・・。
 そして三人は二人など気にせず、帰ってしまった――。
 そして次の日。
「かおりちゃん!か、かおりちゃんが飯井口君と!!」
かおりが学校へ着き、靴箱で上靴をはいていると、倉岡桜が青ざめた顔でかおりにそう言った。
「えっ?」
 そしてかおりが教室に向かうと――かおりちゃんが教室の前で飯井口登馬に腹筋をさせていた。
「はい!後五十回!」
「僕できないよぉ。」
「それでも男か!」
「こんなことしなくても男だよぉ。」
「弱音をはくな!そんなこと言ってると本当に女になっちまうんだから!」
飯井口登馬が死に物狂いで腹筋をしている。かおりちゃんはそんなことにもかかわらずどんどん、どんどん、厳しくなっていく。クラス中きっと、飯井口登馬のことを大変そうだと思うだろう。
「ってか、おまえが女かって感じだし。」
するとなぜか急にふらふらと木林正助が現れた。そして口を挟む。かおりちゃんはその言葉に反応して木林正助の方を見た。カチンときてしまったかのような表情だ。
「なんだってぇ?」
そしてかおりちゃんが突っかかる。周りはボー然とそんな様子を見ている。
「おまえ、もうちょっとかよわくなんないと、男になっちまうぞぉ!」
「言ってくれるじゃんか!」
「やるかぁ?」
「やってやる!」
なぜかそんな会話になり、二人は取っ組み合いをし始めた。
「先生!大変です!」
かおりは慌てて先生をそう呼びに行った。
「あははははぁ。すごいなぁ。」
飯井口登馬はそうやって笑っていた。

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「前の席の飯井口君」よりあとがき

皆さん、今回はどうでしたかhappy01

今回は飯井口登馬っていう独特な人物が現れましたねcoldsweats01

このクラスはもしかしてものすごく個性的な生徒の集まりなのでしょうかgawk

今後が心配されますcoldsweats02

また、これからもロンに追いかけられたりするのでしょうかshock

かおりちゃんなら自らこれからも行きそうですよねshock

「かおりちゃん、ロンと戦う」、なーんてcoldsweats02

その前に「かおりちゃん、木林正助と戦っている」、なーんてもんが出来ちゃったりcatface

あまりこのような話の予定はありませんが、作ってほしかったら申し出てくださいdespair

でも飯井口登馬君、かわいそうですねぇ・・・・・・だって親に見捨てられてるみたいじゃないですかこれじゃあcrying

「飯井口兄弟のお父さん、お母さん、長男もなかなかいいと思いますよsign03

って、誰か飯井口登馬に同情する子は現れるといいですけど・・・・・・

そういう予定は今のところありませんbearing

飯井口登馬には弟に負けないようにがんばってほしいですwobbly

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「長野かおり」登場人物紹介

それでは今まで出てきた登場人物を紹介しましょうschool

①性格、設定 ②自分の呼び方 ③クラス ④重要度 appleの数で評価(最大五個まで)

長野かおり(かおりちゃん)

①四年一組に来た転校生。性格はあまりにも勇ましいし、大胆だし・・・・・・しかしお兄ちゃん子でおませなところもほんのちょっぴりあり。祖父と兄の三人暮らし。父親は祖父のお叱りで一緒に住めない。母親は離婚しており、本人が一番好まない人物。単純な一面もあり、またリーダーシップもたくさんの場面でとっている。勉強はできないが、その他ではほとんどかおりと並ぶ実力だ。

②私

③四年一組

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長野かおり(かおり)

①もともと勉強も運動も性格もよく、学年でもものすごく人気者。しかしときにおどおどするときもある。また、悪気があって人を傷つけることはない。責任感もものすごくあり、おどおどするところもあるがかなりのしっかり者。どんな人も関係なく付き合うことが出来る。母親と二人暮らしをしている。父親は本人はよく分からないのだが、何らかの理由で本人が生まれてからすぐに離婚をしたという。

②私

③四年一組

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倉岡桜(くらおかさくら)

①性格はわりとおとなしく、しかし感情的な面がある。かおりとは保育園に通っていたころからの友達なのだが、少し不安を抱いている。口癖は「ガッビーン」で、よく落ち込む。大胆ではない性格のせいか、周りに言うよりも言われる傾向がある。母親と父親と三人家族で、ごく普通の家庭で育っている。

②私

③四年一組

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永島田先生(ながしまだせんせい)

①ごく平凡な学校の先生。よく学校にいそうな優しそうな先生だ。四年一組の担任の先生で、しかるときも喜ぶときも実に優しそうな先生のような態度だ。独身で学校に一番近いマンションに一人で住んでいる。

②私

③四年一組

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木林正助(きばやしまさすけ)

①よくいそうなムードメーカー的な人物だ。単純に物事を言う。いたずらはする。けんかはする――いろいろとある。納得のいかないことがあれば口を挟み、口げんかになることも。けれど悪いことは悪いでしっかり言えるし、いたずら意外なら純粋に物事を考えられる。父親と母親と兄の四人家族。

②俺

③四年一組

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飯井口登馬(いいぐちとうま)

①男の子にしては珍しいタイプ。「あははははぁ」が口癖で、またそれで受け流す傾向もある。あまり目立たない性格で、とても頼りない。回転寿司屋の長男坊。祖父と祖母と父親と母親と双子の弟の六人家族だ。

②僕

③四年一組

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飯井口翔太郎(いいぐちしょうたろう)

①結構しっかり者。飯井口登馬の双子の弟で、兄と一緒にいては妨げになると考えた親は、私立の小学校に受験させた。時に兄の飯井口登馬を見捨てる場面やほおって置く場面があり、兄のそういうところは仕方がないと感じている。回転寿司屋の次男坊で、祖父と祖母と父親と母親と双子の兄の六人家族だ。

②俺

③私立の小学校の四年生

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ロン(ろん)

①学校周辺をうろうろしている野良犬。凶暴で危険だと評判で、親のほとんどは子に近づいてはならないというほどだ。人間を追いかけたりもする。

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ロサンゼルス(ろさんぜるす)

①とある家に飼われている犬。凶暴で危険だと評判だが、飼い主はなぜか放し飼い。ほとんどの親が子に近づけようとはしない。そのせいか飼い主がいるということは知っていても誰が飼い主なのかあまり知られていない。そのため苦情が出てもあまり効果がなかったりする。ロンの親戚らしい。

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かおりちゃんのお兄ちゃん ①

 「今日お弁当は?」

「私、サンドイッチと卵焼きとぉ……。」

かおりと倉岡桜は、学校に来るなりそう会話をしていた。今日はお弁当。朝から二人とも、もうお昼の話である。

「あんたたち、さっきなんつった……。」

すると急に、それを聞いたかおりちゃんが青ざめた顔で二人のところにやってきた。どうやらこの二人の弁当の中身の話を聞いていたらしい。それにしてはどうしてこんな表情をしているのだろう……?

「わ、忘れた……。」

そしてかおりちゃんはそう言った。もうボー然としている。そして二人はびっくりした顔をする。そういえば昨日、かおりちゃんは先生がお弁当の話をしていたとき居眠りをしていたのだ。それにきっと、お手紙とか献立表とかあんまりしっかり見てもいないだろう。別にこうなってもおかしくは……ないのだ。

「あぁ!弁当忘れてやんのぉ!」

そして木林正助が現れる。そしてそうやってかおりちゃんを馬鹿にする。

「うっさいなぁ!それの何が悪いんだよ!!」

そしてかおりちゃんは元気になり、木林正助に立ち向かう。どうやらかおりちゃんの元気の源は……木林正助?

「電話すればいいんじゃない?公務員室の近くにあると思うよ。誰も家にいないの?」

かおりはかおりちゃんにそう聞く。するとかおりちゃんの表情が一変した。また青ざめ始めたのだ。

「どうしたの?」

倉岡桜が不思議そうにそう聞く。かおりちゃんがポカーンと口をあける。一体何があるのだろう……?

「た、退学……しちゃう。」

そしてかおりちゃんが言ったのは、それだった。

「かおりちゃん、小学生は義務教育だよ?」

かおりはかおりちゃんにそう言う。中学生までは義務教育だ。退学なんてことはありえない。

「あんたたち、殺されるよ……。」

そしてかおりちゃんはそう言うと、教室を出て行ってしまった。……はっきりいって意味が分からない。そのため、三人はポカーンとしてしまった。

「あいつ、何におびえてんだよ。」

「何かあるんだと思うよ……。」

「私たちが殺されちゃったりするってことだよねえ……?」

四年生の三人には、推測不可能な世界だった。

 そしてかおりちゃんは結局、電話をしてしまったらしい。電話をしてから、何かにおびえるかのように席に着いて震えていた。授業中も休み時間もずっとだ。一体何が起こるのだろう……?

 そしてそれから二時間目の終わりごろ、教室のドアが開いた――。

「おい!来てやったぞ!」

するとそう言い、怖そうなお兄さんが教室に入ってきた。みんな不審者だと思い大慌て。いや、一人だけ違った……かおりちゃんは。

「お兄ちゃん!」

かおりちゃんはそう言い立ち上がった。

「てめえ当たり前のこと言ってんじゃねえぞ!ちげえだろ?「ありがとうございました」、だろ?」

お兄さんはそう言う。どうやらこの人は……かおりちゃんのお兄ちゃんらしい。

「あ、ありがとう……。」

そしてかおりちゃんはそう言うと、かおりちゃんのお兄ちゃんの持っている弁当をもらった。なんだかかおりちゃんの頭が上がらないのが周りからも伝わる。

「あ、あなたがかおりさんのお兄さん?」

すると永島田先生がかおりちゃんのお兄ちゃんに尋ねる。教師として、ここは何とかしたいところであろう。けれどかおりちゃんのお兄ちゃんは永島田先生をにらみつけた。

「うるっせぇなぁ。口出すんじゃねえよバーカ。」

そしてかおりちゃんのお兄ちゃんはそう言った。永島田先生は愕然としている。そのあいだに他の生徒はひっそりと教室を出ていた。そして教室の中の様子を廊下で伺っていた。

「だ、ダメよ、そ、そんな口の聞き方を年上の人にしちゃあ……。」

そしておびえながらも永島田先生はそう言った。

「せっかく俺ががんばってここまできたっっつーのに!」

すると今度はかおりちゃんのお兄ちゃんが激怒する。

 そのころ廊下では、生徒はひそひそとしていた。

「かおりちゃん、大丈夫かなぁ……。」

倉岡桜はかおりに心配そうな表情で尋ねる。

「かおりちゃんはお兄ちゃんだもの。きっと大丈夫だよ。」

するとかおりはそう返す。

「そ、そんなもんなのかなぁ……。」

そして倉岡桜はそんなかおりの考えに、少し不安がよぎるのであった。

 そしてまたまた教室では――。

「落ち着いてお兄ちゃん!今日はわざわざいやいや出来てくれたんでしょう?ありがとう。後でラムネおごるからさぁ。ねっ?」

かおりちゃんが頭を下げてかおりちゃんのお兄ちゃんに説得をしていた。もう教師がどうだこうだという限度を超えていたのだ。つまり、永島田先生が役に立つような場面ではなかったということだ。別に永島田先生をダメな教師といっているわけではないのだが……まあまあつまり、兄妹の問題ということである。

「……三本な。」

すると急にかおりちゃんのお兄ちゃんはそう言った。

「えっ?」

急にびっくりしてポカーンとするかおりちゃん。

「何だその反応!当たり前じゃねえか!!弁当作った分、弁当持って来た分、俺を追い払う分。」

かおりちゃんのお兄ちゃんはそうかおりちゃんに怒鳴った。

「わ、分かった……。」

そしてかおりちゃんはそれを引き受けてしまった。

「んじゃあ。約束破ったら承知しねえからな。」

かおりちゃんのお兄ちゃんはそう言うと、教室を出て行ってしまった。そしてかおりちゃんは一息つく。まるで野生の熊から逃げ切れたかというような安心ようだ。

 そして安全と感じた四年二組の生徒は皆、安全を確認して教室に入った。

「かおりちゃん、大丈夫?」

そしてかおりは慌ててかおりちゃんのところに駆け寄った。

「かおり!ラムネ三本私におごりな!」

そして急にかおりちゃんはそう言った。さっきの頭の下がっていたかおりちゃんとは大違いだ。

「えぇ!私がかおりちゃんのお兄ちゃんにおごるってこと?」

かおりはびっくりしたような表情でそう返す。

「よく聞いてるもんねぇ。よく分かってるじゃない。」

にんまりした顔でかおりちゃんは言う。かおりはあきれた顔を見せる。変なときにかおりはかおりちゃんに話しかけてしまったのだ。

「かおりちゃんがラムネおごるんでしょ?うそついたら大変なことになるんでしょ?私がおごって……大丈夫なの?」

するとかおりは深刻そうにかおりちゃんにそう言った。あまりにもかおりが深刻な顔をしてかおりちゃんに言うので、かおりちゃんは少しゾクッとしてしまった。どうやらこのかおりの深刻そうな顔は、かおりちゃんには効くらしい。

「ま、まぁいいわ!あんたなんかの力借りなくたってどうにだってなるんだから!」

そしてかおりちゃんは微々りながらも強気でそう言った。かおりは少しあきれているところがある。

「よしっ!絶対にただでラムネ三本手に入れるんだからぁ!」

かおりちゃんは大きな声で決意を叫んだのであった。

 そして放課後――。

「かおり!行くよ!!」

かおりがいつも通りに教室を出ようとすると、かおりちゃんはそう言った。かおりはまさかと思いぴくっとした。

「ど、どこに……?」

そして聞いた。

「ただでラムネを手に入れるの!あんた、まさか付き合わないんじゃないでしょうねえ。別に付き合うのはおごるとは違うのよ!」

するとかおりちゃんはそう言う。かおりは言いようにいわれているような気がした。

「無理じゃない?」

きりがないような気がしてかおりはそう言った。

「出来る!私を侮らないでよね!行くわよ!」

けれどかおりちゃんの強い意思が勝った……。と、いうことでかおりはかおりちゃんがただでラムネを買うことに協力することになったのであった。

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かおりちゃんのお兄ちゃん ②

 そして二人が向かったのは――交番。

「あの、ラムネをただで買える店ありますか?」

かおりちゃんは交番にはいるなりそう言った。

「えっ?」

交番にいた一人の警察官は、ちょっとびっくりした顔でかおりちゃんを見た。かおりにはそれはとてもどきどきすることだった。

「か、かおりちゃん何言ってるの!?」

かおりは顔を真っ赤にしてかおりちゃんにそう言った。すると平然とした顔でかおりちゃんはかおりを見る。

「かおりちゃん!交番はけちな人が入るお店じゃないんだよ?」

そして続けてかおりは言った。あんなことを聞いたら、交番の警察官に馬鹿にされるに決まっているとかおりは思ったのだ。普通そんなことは聞かないし、おかしいと。

「だからって別に聞いたっていいじゃない。」

かおりちゃんはひねくれた顔でかおりに言う。かおりはなんだかなあというような表情を見せる。

「君たち、ラムネをただで買いたいのかい?」

すると交番の警察官が、優しくそう言った。

「えっ……?」

思わず二人の口から声がこぼれてしまった。

 ――それから。

「あの人いい人だったね。」

「ラムネを三十本売ればいいんだな!」

そんなことを言いながら二人は歩き出していた。交番の警察官の話だと、ラムネを三十本売れば、ラムネが三本ただで手に入る駄菓子屋があるという。

「でも私、そんな店初めて知ったよ?」

「全く、ほんとにここらの住人なわけ?」

馬鹿にされたり馬鹿にしたり、この二人はどうなることやら……。

 そしてその駄菓子屋に到着。かおりもかおりちゃんも、初めて来るお店だった。

「すみませぇん。」

二人は恐る恐るそう言いながら店に入った。どうやら客はいないらしい。

「なんだい?あんたたちは。」

すると急に店の奥からおばあさんが出てきた。二人ともあまりにも怖そうな顔立ちだったので、足がすくんでしまった。けれどもかおりちゃんにはものすごい目的があったため、かおりちゃんは勇気を持っておばあさんのところへと行った。

「ラムネを三十本売れば三本ラムネがもらえるって聞いて来たんだ。」

かおりちゃんはそしてそう言った。愛想のない、まるで何かに挑むかのような表情だ。

「ふっ、かわいくない子だね。あんたに三十本売れるのかね。」

おばあさんが馬鹿にしたかのようにそう言った。かおりちゃんは少し動揺して、目が泳いだ。するとおばあさんはにんまりする。

「な、なんだと!うっせえぞばばあ!」

おばあさんの表情にイラついたかおりちゃんは、勢いよくそう言った。

「かおりちゃんそんなこと言っちゃダメだよ!」

そしてかおりはあわてて止める。これでは売らせさえもしてもらえないような気がしてかおりはどきどきだ。

「今日の夜の七時までに売れたらやるよ。」

するとおばあさんはそう言い、ラムネ三十本を急に取り出した。

「ただし、この娘はここにいてもらうよ。」

そして続けておばあさんはそういうと、かおりを自分のほうへと引っ張った。

「ふっ、私一人でだって平気なんだから!」

そしてかおりちゃんは大声でそう言うと、怒りながら出て行った。

「もしかして、怒ってますか?」

かおりちゃんが出て行ってから、かおりは恐る恐るおばあさんに聞いた。

「あぁ、怒ってるよ。」

おばあさんはそう答えた。

「すみません……。」

かおりは申し訳なさそうにそう謝る。

「私はラムネおばって呼ばれてる。こりゃあ……無理だね。」

ラムネおばはそう言った。ラムネおばは確信していた。後二時間で、三十本も売れるわけがないことを。かおりはあまりにも急だったので、答えることが出来なかった。

 そしてそのころかおりちゃんは……。

「おじさん、ラムネ買ってくれない?」

「炭酸はねえ。」

トロッコにラムネを積んで売りまわっていた。

「お兄ちゃんたちラムネ買って。」

「金持ってねえし。」

けれどもなかなか売れない。

「私だから……。」

ふとかおりちゃんはそうつぶやいてしまった。さっきのラムネおばの言葉が相当効いているみたいだ。

「おまえ何やってんだ?」

そんな時、そんな声がしてかおりちゃんが振り向くとそこには木林正助の姿があった。

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