「今日お弁当は?」
「私、サンドイッチと卵焼きとぉ……。」
かおりと倉岡桜は、学校に来るなりそう会話をしていた。今日はお弁当。朝から二人とも、もうお昼の話である。
「あんたたち、さっきなんつった……。」
すると急に、それを聞いたかおりちゃんが青ざめた顔で二人のところにやってきた。どうやらこの二人の弁当の中身の話を聞いていたらしい。それにしてはどうしてこんな表情をしているのだろう……?
「わ、忘れた……。」
そしてかおりちゃんはそう言った。もうボー然としている。そして二人はびっくりした顔をする。そういえば昨日、かおりちゃんは先生がお弁当の話をしていたとき居眠りをしていたのだ。それにきっと、お手紙とか献立表とかあんまりしっかり見てもいないだろう。別にこうなってもおかしくは……ないのだ。
「あぁ!弁当忘れてやんのぉ!」
そして木林正助が現れる。そしてそうやってかおりちゃんを馬鹿にする。
「うっさいなぁ!それの何が悪いんだよ!!」
そしてかおりちゃんは元気になり、木林正助に立ち向かう。どうやらかおりちゃんの元気の源は……木林正助?
「電話すればいいんじゃない?公務員室の近くにあると思うよ。誰も家にいないの?」
かおりはかおりちゃんにそう聞く。するとかおりちゃんの表情が一変した。また青ざめ始めたのだ。
「どうしたの?」
倉岡桜が不思議そうにそう聞く。かおりちゃんがポカーンと口をあける。一体何があるのだろう……?
「た、退学……しちゃう。」
そしてかおりちゃんが言ったのは、それだった。
「かおりちゃん、小学生は義務教育だよ?」
かおりはかおりちゃんにそう言う。中学生までは義務教育だ。退学なんてことはありえない。
「あんたたち、殺されるよ……。」
そしてかおりちゃんはそう言うと、教室を出て行ってしまった。……はっきりいって意味が分からない。そのため、三人はポカーンとしてしまった。
「あいつ、何におびえてんだよ。」
「何かあるんだと思うよ……。」
「私たちが殺されちゃったりするってことだよねえ……?」
四年生の三人には、推測不可能な世界だった。
そしてかおりちゃんは結局、電話をしてしまったらしい。電話をしてから、何かにおびえるかのように席に着いて震えていた。授業中も休み時間もずっとだ。一体何が起こるのだろう……?
そしてそれから二時間目の終わりごろ、教室のドアが開いた――。
「おい!来てやったぞ!」
するとそう言い、怖そうなお兄さんが教室に入ってきた。みんな不審者だと思い大慌て。いや、一人だけ違った……かおりちゃんは。
「お兄ちゃん!」
かおりちゃんはそう言い立ち上がった。
「てめえ当たり前のこと言ってんじゃねえぞ!ちげえだろ?「ありがとうございました」、だろ?」
お兄さんはそう言う。どうやらこの人は……かおりちゃんのお兄ちゃんらしい。
「あ、ありがとう……。」
そしてかおりちゃんはそう言うと、かおりちゃんのお兄ちゃんの持っている弁当をもらった。なんだかかおりちゃんの頭が上がらないのが周りからも伝わる。
「あ、あなたがかおりさんのお兄さん?」
すると永島田先生がかおりちゃんのお兄ちゃんに尋ねる。教師として、ここは何とかしたいところであろう。けれどかおりちゃんのお兄ちゃんは永島田先生をにらみつけた。
「うるっせぇなぁ。口出すんじゃねえよバーカ。」
そしてかおりちゃんのお兄ちゃんはそう言った。永島田先生は愕然としている。そのあいだに他の生徒はひっそりと教室を出ていた。そして教室の中の様子を廊下で伺っていた。
「だ、ダメよ、そ、そんな口の聞き方を年上の人にしちゃあ……。」
そしておびえながらも永島田先生はそう言った。
「せっかく俺ががんばってここまできたっっつーのに!」
すると今度はかおりちゃんのお兄ちゃんが激怒する。
そのころ廊下では、生徒はひそひそとしていた。
「かおりちゃん、大丈夫かなぁ……。」
倉岡桜はかおりに心配そうな表情で尋ねる。
「かおりちゃんはお兄ちゃんだもの。きっと大丈夫だよ。」
するとかおりはそう返す。
「そ、そんなもんなのかなぁ……。」
そして倉岡桜はそんなかおりの考えに、少し不安がよぎるのであった。
そしてまたまた教室では――。
「落ち着いてお兄ちゃん!今日はわざわざいやいや出来てくれたんでしょう?ありがとう。後でラムネおごるからさぁ。ねっ?」
かおりちゃんが頭を下げてかおりちゃんのお兄ちゃんに説得をしていた。もう教師がどうだこうだという限度を超えていたのだ。つまり、永島田先生が役に立つような場面ではなかったということだ。別に永島田先生をダメな教師といっているわけではないのだが……まあまあつまり、兄妹の問題ということである。
「……三本な。」
すると急にかおりちゃんのお兄ちゃんはそう言った。
「えっ?」
急にびっくりしてポカーンとするかおりちゃん。
「何だその反応!当たり前じゃねえか!!弁当作った分、弁当持って来た分、俺を追い払う分。」
かおりちゃんのお兄ちゃんはそうかおりちゃんに怒鳴った。
「わ、分かった……。」
そしてかおりちゃんはそれを引き受けてしまった。
「んじゃあ。約束破ったら承知しねえからな。」
かおりちゃんのお兄ちゃんはそう言うと、教室を出て行ってしまった。そしてかおりちゃんは一息つく。まるで野生の熊から逃げ切れたかというような安心ようだ。
そして安全と感じた四年二組の生徒は皆、安全を確認して教室に入った。
「かおりちゃん、大丈夫?」
そしてかおりは慌ててかおりちゃんのところに駆け寄った。
「かおり!ラムネ三本私におごりな!」
そして急にかおりちゃんはそう言った。さっきの頭の下がっていたかおりちゃんとは大違いだ。
「えぇ!私がかおりちゃんのお兄ちゃんにおごるってこと?」
かおりはびっくりしたような表情でそう返す。
「よく聞いてるもんねぇ。よく分かってるじゃない。」
にんまりした顔でかおりちゃんは言う。かおりはあきれた顔を見せる。変なときにかおりはかおりちゃんに話しかけてしまったのだ。
「かおりちゃんがラムネおごるんでしょ?うそついたら大変なことになるんでしょ?私がおごって……大丈夫なの?」
するとかおりは深刻そうにかおりちゃんにそう言った。あまりにもかおりが深刻な顔をしてかおりちゃんに言うので、かおりちゃんは少しゾクッとしてしまった。どうやらこのかおりの深刻そうな顔は、かおりちゃんには効くらしい。
「ま、まぁいいわ!あんたなんかの力借りなくたってどうにだってなるんだから!」
そしてかおりちゃんは微々りながらも強気でそう言った。かおりは少しあきれているところがある。
「よしっ!絶対にただでラムネ三本手に入れるんだからぁ!」
かおりちゃんは大きな声で決意を叫んだのであった。
そして放課後――。
「かおり!行くよ!!」
かおりがいつも通りに教室を出ようとすると、かおりちゃんはそう言った。かおりはまさかと思いぴくっとした。
「ど、どこに……?」
そして聞いた。
「ただでラムネを手に入れるの!あんた、まさか付き合わないんじゃないでしょうねえ。別に付き合うのはおごるとは違うのよ!」
するとかおりちゃんはそう言う。かおりは言いようにいわれているような気がした。
「無理じゃない?」
きりがないような気がしてかおりはそう言った。
「出来る!私を侮らないでよね!行くわよ!」
けれどかおりちゃんの強い意思が勝った……。と、いうことでかおりはかおりちゃんがただでラムネを買うことに協力することになったのであった。
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