アピール

60 佐々木情報!

 そしてそんなころ、川村と西嶋も部屋へと入っていた。お互いこんなことをするのは久しぶりだったので、三浦と同様くたくただった。二人はすぐに夕食にする気にもなれず、ただただ座り込む。
「川村、篠木と同じ学校だったんだって?」
ふと西嶋が、そんなことを言い出す。川村がびくっとして西嶋を見る。
「う、うん・・・・・・。」
そして川村はそううなずく。なぜか目が泳いでいる。
「どう見ても違く見えたぞ?」
あきれたように西嶋は言う。誰が見ても、二人が同じ学校とは到底思っていなかっただろう。同じ学校だったというだけで、特に接点はなかったのだろうか。しかし、西嶋はあの篠木に言われたとき、何かよからぬことを感じた。あの篠木の表情を見て、とても接点がないようには見えなかった。
「そっ、そっか。だよね・・・あんまりしゃべらなかったし・・・・・・。」
そしてぼそぼそと川村はそう言った。この川村の表情。篠木のあの表情も見たからだろう。やけにわけありに見えてしまう。
「西嶋知らないのー?川村の元彼女じゃーん。」
すると急に、どこからかそんな声。それは佐々木の声だった。
「佐々木!おまえ!」
佐々木は急に二人の部屋に現れた。西嶋は動揺を隠せない。
「えっ?そうだろー?」
平然とした顔で佐々木は川村にそう尋ねる。
「な、何で知ってるの!?」
川村がびっくりしたような表情でそう言う。そう、川村と篠木は中学生のころ、付き合っていたという経歴があるのだ。
「篠木が言ってたよ~。」
「そ、そっか・・・・・・。」
(篠木、普通に言ってるんだなぁ・・・・・・元だもんな)と、川村はふと思った。川村だったら、とてもそんなことは口にできない。付き合っていたころだって、自分が篠木と付き合っていることは誰にも言わなかった。きっと篠木のことだ。付き合っていたころも普通に暴露していたことだろう。一方、西嶋の頭の中はこんがらがっていた。(俺はあの時、田村を選ぶべきだったのか!?)と、あのときのことを振り返る。もしかしたら、西嶋が田村を選んでいたら、何かが変わっていたのかもしれない。
「ホントにおまえらなんか遠いよなー。」
あきれながら佐々木は言う。確かにそれはあっている。
「もう勝手に部屋は行ってくんな!このドタキャン男め!」
西嶋はそう言うとそう怒って佐々木を部屋から追い出す。さっきのあの佐々木の言葉はいらいらしてたまらなかった。あの口調で言われるのも、その上自分の苦労も知らないのにという悔しさと――、とにかく腹立たしい限りだった。
「ごめんってばー!そう怒らないでくれよー!」
佐々木はそう言っていたが、そんなことにも構わず西嶋は佐々木を追い出したのであった。

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59 山岡の秘密

 そして三浦は西嶋にたたき起こされ、結局少し寝ぼけながらも自分で部屋まで戻った。
「三浦飯ー!」
部屋に入るとすぐに山岡がいて、ぐずるように三浦に言ってくる。
「俺疲れたぁ。」
三浦はそう言うと、ばたっと床に倒れる。
「んじゃあ城山のところに行ってくるぅ!」
すると相当お腹が減っているのか、一目散に山岡の口から出てきたその言葉。全く、三浦を同情する気持ちはないのだろうか。
「ちょっと待て!」
上に上がろうとしている山岡に、慌てて三浦がストップをかけた。疲れていた体をどうにか三浦は立たせる。山岡はキョトンとした顔で三浦を見る。
「おまえ、どうして遊園地なんかにいたんだよ。川村に聞いたぞ?」
三浦が疑う表情で山岡に言う。そりゃそうだ。三浦はてっきり学校で山岡は部活をやっているもんだと思っていたのだから。
「えっ!三浦もいたの!!ずるい!何も言ってくれなかったじゃぁん!!」
「だっておまえが部活だって言ってたからさぁ・・・・・・。」
「俺だって部活だって思ってたよ!でもああいうことになってた。」
「なんじゃそりゃぁ。」
三浦はそう山岡と交わすと、大きくため息をつく。一体山岡は、この先どんな運命が待っているというのだろう。
「もしかしてさぁ・・・・・・金のこと気にしてんの?」
するとふと、三浦がそんなことを言い出した。おとぼけていた山岡の表情が、一瞬にして変わってしまう。山岡はいつもはばかげたような感じなのに、いざとなると信じられないような表情を見せる。一体彼の裏には、何があるというのだろうか。
「俺にはもう、退学が怖いだなんていう考えはないんだ。生活が苦しくなるとかさ。だから、お金の心配なんていらないんだ。もちろん、働かないとか努力しないって意味じゃないけど。」
山岡はそう言い、三浦に優しい表情を見せた。その顔があまりに穏やか過ぎて、もう一生会えないような衝動に三浦は化せられた。
「山岡・・・・・・。」
思わず口に出してしまった言葉だった。だから次の言葉が、続かない。
「だろ?」
すると山岡が、にっこりとした表情で三浦に言う。
「俺、おまえがいなくちゃ嫌だからな。退学なんてしやがったら、おまえのこと不良扱いしてやるからな!だから、そんなこと言うのはよせよな・・・・・・。」
三浦は怒っていたわけじゃない。ただ、その言葉が自分にとってあまりにもさびしい言葉だった。山岡がもしも退学なんてことになったら、三浦は裏切り者なんて思わずに、先に止めようとすることだろう。
「ありがとう!飯食おうぜぇ!」
山岡はそう元気よく言うと、はしごを降りた。そして(そう言ってくれるって、分かってた・・・・・・)と、ふと思うのだった。

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58 帰省。

 「ガタンガタンガタンガタン・・・・・・」
そして六人は電車に乗っていた。あっという間に時間は過ぎて、もう夕日は沈もうとしていた。
「三浦寝ちゃった・・・・・・。」
「この人多分、いつもこうなんだと思う。」
「私もそう思うー!」
「二人とも三浦君をおんぶして帰るの?」
「そんなわけねえだろ!」
そう五人は仲良く(?)交わす。三浦はもう電車の中で熟睡。川村によされかかって、おまけによだれが出そうな寝方。
「写メとっとこ。」
そう言い紫がケータイを取り出す。
「何だよその思考回路はぁ。」
あきれたような表情で西嶋が言う。
「後で役に立つかもしれないじゃない。」
そう言いばっちり紫は撮った。
「なんてやつだ・・・・・・。」
ボソッと西嶋はそう言う。
「田舎の子って三浦君みたいな子ばっかなのかなぁ・・・・・・。」
思わずそんなことを口にしてしまった川村。そして失礼なことを言ってしまったような気がして後悔しだす。けれども五人が気づくはずもない。
「川村、怖いこというんじゃねえよ。」
そして西嶋がそう突っ込んできた。これには川村は安心。全く、川村の感情についていくのは大変だ。

 そして六人はそれぞれに分かれたのだった・・・・・・。

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57 似たもの同士。

 そして、最後に乗った川村と田村は・・・・・・。
「すっごーい!さすが観覧車!!」
「そ、そうだねえ・・・・・・僕もそう思う。」
そんなかんじで、教室と同じような会話をしていた。
「せっかくこんな高いところに上がってるんなら、雲が目の前に見えたらいいのにぃ。」
そんなファンタジックなことを言う田村。
「だねぇ・・・・・・。」
それに相槌を打つ川村。どうやらただ単に相槌を売っただけでなく、本気でそう思っているような気配が漂っている。
「ねえ、川村君ってさぁ・・・・・・学校楽しい?」
「えっ?」
するとふと、田村から思いもよらない言葉が出てきた。川村はびっくりした顔で田村を見る。
「なんか入りたくて入ったって感じがしないって言うか・・・・・・。」
そうぼそぼそと田村は言う。
「えぅ!?な、何で!?」
川村は動揺を隠せない。(どうして田村はそんな話題にするんだろう・・・・・・?)と、川村はふと考え込む。そして、田村が伝えたい思いは――。
「えっ、えっとごめん!なんか、変なこと言っちゃって!!」
我に帰ったか田村は慌ててそう言った。一瞬にして田村の頬が赤くなる。
「田村もそうなの?」
そして逆に我に帰れなくなった川村が思わず平然とそんなことを聞いてしまう。
「えっ!わ、私は別に・・・・・・。」
恥ずかしくなったのかぞれとも図星なのか、なんともいえないような表情で田村は返した。
「お互い、大変だよね・・・・・・。」
ボソッと川村がそんなことを言う。
「そうだね・・・・・・。」
そして田村はそう返す。
 そして、全員が観覧車を降りたのだった・・・・・・。

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56 紫の気持ちの裏には・・・

 そしてそんな西嶋と篠木よりも、大変なことになっていたのは三浦と紫のペアーだった。どうみても、観覧車はそこだけやけに揺れていた。
「どうして私なのよ!」
「怒ってるねえ。」
「そんなの見れば分かるでしょ!」
「なんとなくなぁ。」
「こんなに表現してるっていうのになんとなく程度なの!?ちょーありえない!!」
二人は観覧車に乗るなりそんな元気な口論を始めていた。この二人、今日に関してはしゃべりすぎだ。
「ど、どうして私を選んだのよ!」
少し動揺しながらも紫は言う。
「えっ?どうして?」
キョトンとした顔で三浦は言う。
「だって、率直過ぎたから!!」
そしてそう紫はこたえる。いつの間にか紫は、興奮してるんだか照れてるんだか、異常なほど顔を真っ赤にしていた。紫にしては、取り乱しているような気がする。
「べっつにぃ。ちょっと悪いことしちまったし。」
三浦はそう言い、紫から目線をそらす。そしてぼんやりと空を見ている。紫には一瞬、あのときのことが思い出された。そんな深い意味でこんなやつが自分を選んだなど、紫は考えもしていなかった。そっけなく、もっと気軽な答えが返ってくるもんだとてっきり思っていたのだ。
「あっ、あぁ、二股のこと!これで罪滅ぼしでもしたつもり?残念だけど、もうあんたに二股する気も深くかかわる気も全くないんだから!」
少し動揺しながらも、紫はそうドンと構える。すると、三浦がチラッと紫を見た。その目は何だか疑い深い顔。紫はドキッとして体をびくつかせる。するとまた三浦の目線は変わる。
「おまえ、二股でもいいから、癒されたいんだろ?」
「えっ・・・・・・。」
紫はびっくりして言葉を失った。
「かわいそうだよ、あんた。ろくにしっかり愛されたこともないんだろぉ。」
その三浦の行っている姿は、真剣そのものだった。
「やめてよ、そういうの・・・・・・。」
いつの間にか、嫌な空気がここを漂わせる。
「て、てか、ばかなこと言わないでよね!」
紫がいくらがんばっても、ここの空気は変わらない。三浦の情が大きいことを、今の状況が物語っている。紫では、もうどうにもできないような状況がここにある・・・・・・。
「おっ、頂上だ。」
三浦はそう言い、下を見下ろし始める。しかし、紫は全く見る気がしない。あんなことを言われてしまえば、返す言葉どころか自分がどうすればいいのかも分からなくなる。(私、失恋したばっかりなのに・・・・・・どうしてこんなときにそんなこと言うのよ・・・・・・)と、紫はふとそう思う。そう思ったとたん、泣きそうになっている自分がいた。紫は、この前振られたばかりだった。紫は今までに何人かの人と付き合ってきた。しかし、誰もが告白しておいて振っていった。それはどれも紫が悪いわけではなかった。彼の、ただの自分勝手・・・・・・。
「・・・・・・?」
そんな紫の様子に三浦が気づき、キョトンとした顔で紫を見る。それに気づいた紫は、少し不機嫌な顔で三浦を見た。少し涙目にはなっていたが、その顔は少し怖かった。そんな紫に、三浦はにんまりとした表情を見せるとこう言った。
「もしかして・・・・・・高所恐怖症?」
紫には、想像絶するものだった。
「ちがぁう!ばかにすんじゃないわよ!」
「ば、ばかにしてた!?」
「してたわよ!」
「いやぁ、びっくり。」
そしてまた、元の雰囲気に戻る二人・・・・・・。(こいつ、変なやつだなぁ)と、三浦は思う。(どうしてあいつ、おかしいんじゃないの!?)と、そして紫も。つまり、お互い同じような感じで相手を見合っているようだ。
 そして二人は終わりよければすべてよしというような感じで、観覧車を降りたのだった・・・・・・。

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55 篠木の告白

 そして観覧車に始めに一緒に乗った西嶋と篠木。始めは今までもろくに話しをしていたわけではないので、会話が弾むわけもなかった。数分の間は、無言でお互い向かい合っていた。しかし、顔を合わせることはなく・・・・・・。
「西嶋君って、面白いよね。」
そして不意にそんな言葉を口にしたのは篠木のほうだった。
「えっ?」
びっくりした表情で西嶋は篠木を見る。篠木の顔は、にっこりとしていた。と、いうよりも、西嶋が見る前からずっと、篠木はにっこりしていたのだ。黙り込んだままだったが、篠木がそれで「どうしよう」と、川村のように動揺するような性格じゃない。
「だって顔に出るもん。くだらないこととか考えてるときとか。顔に出ないというときはただボーっとしているときのみだけだよ?」
「俺ってそんなに出る!?」
「うん!」
西嶋のびっくりしている表情に、篠木は笑いながらそう答えている。(やべー、俺)と、西嶋は深刻に考え込んでしまう。高校になってからだ。「顔に出る」と、言われるようになったのは。もしかしたらこれが、学校の校風なのかもしれない。何だか変な表現だが・・・・・・。
「いろいろしゃべろうねぇ!」
「お、おぉ・・・・・・。」
そして会話は弾みつつあるのだった・・・・・・?
 そして篠木は観覧車に降りるときに、こんなことを口にした。
「私、どうして佐々木君に誘われたのか分かるような気がするな・・・・・・。」
西嶋がびっくりして篠木の顔を見る。その篠木の口調は、今まで見た感じとは少し違ったのだ。
「私、川村君と同じ学校だったから。」
そして篠木はそう、西嶋に微笑んだ。

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54 間違った選択。

「ったく、何でそういうことになるんだよ・・・・・・。」
三浦のあまりの身勝手さに、思わずそんな言葉がこぼれてしまった西嶋。そして女子三人もその話の中に入る。
「えっ?定番じゃね?」
三浦は平然とそう言う。
「何よその考えぇ・・・・・・観覧車って長いから飽きちゃったりもするもんなのよ。大きいとね。」
そして紫もそう西嶋に同意する。この二人、仲はあまり深くはなれないかもしれないが、考えや性格だけは似ていると思う。つまり、自分が二人いたら上手くやっていけないタイプの二人。
「あぁ、後、男女二人で入んなきゃいけないんだったさぁ。」
すると急に付け足すように三浦は言った。もちろんさっきの二人の言葉は全く無視。これができるから三浦は自分の考えを貫き通すことができるのではないだろうか?六人は着々と観覧車のほうへと歩きつつある。もちろん先頭は三浦。
「な、何だそれ・・・・・・。」
テンション下げ気味に西嶋は言う。
「佐々木がそうやって言ってたぞぉ。」
そして三浦はそう返答。(計画済みかよ――)と、西嶋はふと思った。そう、これはもともとあの佐々木が仕掛けたものなのだ。これほどのことをさせるとなると、仕掛け人の佐々木本人が行きたくないのも無理はない。けれどあの三浦を、よくもまあこの遊びの段取りを進める役に選んだと思う。まあ、山岡と三浦のどちらかに頼むとなれば三浦となるかもしれないが・・・・・・城山や沖永なんて三浦の立場にいたら、一体どんなことになっていたことやら。
「紫ぃ、一緒に入ろうぜ。」
そして三浦は率直にそう紫に言った。紫はびっくりして三浦を見る。あまりにも唐突過ぎた言葉に、どうすればいいのか分からなくなったのだ。
「は、はい?」
そして動揺のあまり、思わずそう聞き返してしまった。
「一緒に入ろうって言ってんだよ。いいだろ?」
「あっ、うん・・・・・・。」
(すげー、佐々木並みにすげー!!これも計画・・・・・・か?)と、思わずそんなことを思いながらも西嶋は二人を見た。三浦が何か思惑がって誘ったかは定かではないが、もしも思惑があったとしても、ここまで唐突に言わなくても・・・・・・三浦のある意味素直な性格には圧倒されてしまう。
「じゃあ篠木、一緒に入ろうぜ。」
「うん!いいよー!」
そして次に西嶋が篠木を誘う。(川村は篠木よりも田村のほうがいいよな・・・・・・)、これが西嶋の考えだった。人見知りっぽい川村には、到底篠木と二人っきりではやってけないと思ったのだ。ふと見ればもういつの間にか川村と田村は二人で一緒に話している。田村が「じゃあ私たちで入ろうね」などと川村に声をかけたのだろう。とても川村が、先に人を選ぶなどするとは思えない。それを知っていたせいか、西嶋が先に誘うことになったという感じなのである。もしもあの時、西嶋が何も言わずに突っ立っていたら、今は沈黙が続いている状態だったかもしれない。
 そして六人はそれぞれに、観覧車に入ったのであった・・・・・・。

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53 山岡いろいろ。

 「どこ行ってたんだよぉ。」
川村に気づくと西嶋はすぐにそう川村に言った。(全く、俺がどれだけ苦労しているか・・・・・・)と、自分で自分の苦労に同情する西嶋。自由に動き回る三浦と、それについていけない川村。この二人の中和を取らなくてはいけないのだ。結構な難題だ。
「ご、ごめん・・・・・・。」
川村はそう言い、二人と一緒に歩き出す。
「もう心配したんだぜぇ。お化けに食べられたのかと思ったぜ。」
三浦が楽しそうにそう言う。本当に心配していたのかというような表情でもある。まあそこまで心配はしてもいないのだろう。心配するぐらいなら、こんな自由に動き回るはずがない。しかし、そんな一方で、川村はニコニコしていた。「お化け」という言葉で、さっきの山岡とのことを思い出してしまったのだ。あれには川村は、感激していた。夢にまでも思っていなかったのだ。さすがにその様子にも西嶋は気づいた。この表情、あまりにも分かりすぎる。
「やけに笑顔じゃねえか。まさかまたお化けに助けられたんじゃあ・・・・・・。」
そう西嶋が言いかけたときだった。背後からお化けが登場!三人は慌てて走り出したのだった。
 そして無事、三人はそのままお化け屋敷を出た。
「川村、さっきのことなんだけど・・・・・・。」
出るとすぐに西嶋はそれではというかのようにそう川村に聞いてきた。川村の体がピクッとする。さっきまでお化けに夢中で、さっきの西嶋の言葉などすっかり忘れていたのだ。ふと思い出せば、あのときの西嶋の呆れ顔が思い出される。
「う、うん。山岡君が、助けてくれたんだ・・・・・・。」
川村はそう慌ててこたえる。川村だから「慌てて」という表現になってしまうのかもしれないが、普通の人間だったら多分、「興奮しながらも」などという表現になる表情をしていた。
「はぁ?部活はぁ?」
そして西嶋は定番の反応。もうこれほど長くやってくると、西嶋の反応もなんとなく想像ができてくる。
「さぁ・・・・・・。」
そして川村が分かるはずもなく。けれど今の川村は、いつもよりも返答が早いように思える。
「まあ、今の時代、いろいろあるからなぁ。」
そしてよく分からない言葉を残して三浦はとっとと歩き出す。
「わ、分かるような気もする・・・・・・。」
そしてボソッとそんなことを言い出す川村。
「はぁ?俺だけか、分かってねえのは。」
そして西嶋もそれに続く。西嶋が三浦の言っている意味を分かるわけもない。
 
それからあまり時間がたたないうちに、女子三人もお化け屋敷から出てきた。
「じゃあもう時間ないから観覧車ね!」
そして三浦はまた一人で歩き出す。もちろん、観覧車のほうへ。

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52 「ありがとう」

「うわぁ!」
すると急に川村は・・・・・・転んだ。(ホントドジだな、僕・・・・・・もうやだな)と、そういじけだす川村。川村は一度落ち込み始めるととことん落ち込み続ける。川村は落ち込みながらも何とか重い体で立ち上がる。やっぱりこの先が思いやられる。
 と、
「大丈夫か?」
急にそんな声が。
「えっ・・・・・・!!」
川村はびっくりして後ろを振り返る。するとなんとお化けが川村を心配そうに見ていた。どうやらここで化けている人らしい。
「そっちは関係者以外立ち入り禁止だぞ?入り口はこっち。まだ後ろは来ないと思うし、早く二人に追いつこうぜ。」
お化けはにっこりと川村に微笑む。川村はほっと安心した。もうこれで大丈夫だ。けれど川村は、気になることがあった。それは・・・・・・。
「山岡、君・・・・・・?」
そう、川村にはどう見てもそのお化けは山岡にしか見えなかったのだ。変装もしているし、その上薄暗い。しっかりと見えるわけではないけれど、それはどう見ても山岡だったのだ。
「さすが友達!分かってんじゃん!」
山岡は元気よくそう言うと、川村の背中をばしばし叩く。いつもながら山岡は元気だ。こんなところにいるのは意外だったが・・・・・・。
「さぁ、走ろうぜ!」
「うん!」
そして二人は走り出した!
 それからいつの間にか川村はあっという間に二人に追いつくことができた。もう二人は目の前だ。
「あそこにいるだろ?行ってこいよ。」
山岡がにっこりとして川村に言う。そしてもと来た道へと戻ろうとする。
「や、山岡君。」
しかし、川村は山岡を呼び止める。山岡はキョトンとした顔で川村を見る。そして川村はもじもじとしながらも、
「ありがとう。」
と、言った。すると山岡はにっこりして、川村の近くに行くとこうささやいた。
「ありがとうってさぁ、両方言い気持ちになれるよな。」
そして川村はその言葉ににっこりとうなずくと、走って二人のところへと向かった。

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51 川村、絶体絶命!!

 そして結局、三人ずつ男子が先で入ることになった。何とか子の場でしらけることはなく、六人としては今日初めて会ったメンバーもいる中ですごいことだと思われる。その大半は多分、三浦と紫のおかげであろう。
「じゃあ先行くぞ。」
とうとう男子三人の番になり、西嶋は女子三人にそう言う。
「何かあったら次私たちだからね!」
にっこりと田村が西嶋に言う。
「安心しろ。俺らは平気だ。」
少しあきれ顔ではありながらも西嶋は言う。
「せっかく入れるんだし、楽しもうぜぇ!」
まだ西嶋が話しているにもかかわらず、三浦はそう歩き出す。
「じゃあ、行ってきます・・・・・・。」
そして川村がそう最後に締めくくり、三人はお化け屋敷へと入っていった。
「あいつらほんとに大丈夫なの?とても一緒の寮に住んでる仲間とは思えないんだけど。」
紫があきれながらそう肩を下ろす。
「でもいつも西嶋君と川村君もあんな感じだよ?」
そして平然とした顔でそう言う田村。
「んじゃあ大丈夫だねぇ!」
そしてそれに続き言う篠木。篠木は考えることなくそう発しているよう。しかし紫には、心配が耐えないのだった。
 そしてそのころ三人は・・・・・・?
「川村、歩くの早すぎ。」
西嶋が川村の背中を見ながらもそう言う。そう、川村はまだ何も現れていないというのに、やけに二人よりも歩くのが早かった。いつもはおどおどしながら川村が二人についていっているのに、ここでは何だか様子が違う。
「ご、ごめん・・・・・・。」
川村は二人のほうに振り返るとそう謝る。西嶋はふとため息。しかし、西嶋には見えていた。川村が振り返る直前、川村の表情は好奇心いっぱいだったことを。(何だよ、早くお化けに会いたいだけかよ・・・・・・)と、西嶋はまたあきれているのだった。すると三浦が、
「川村、俺らのために下見してくれてんの?頼りになるわぁ。」
なんてことを言っている。
「どうしてそう言う思考回路になるんだよ!」
川村には失礼だが、どうも西嶋には三浦の発言が納得できなかった。
「西嶋ぁ、おまえお化け屋敷とか面倒でしっかり見ないタイプだろぉ。」
すると三浦は西嶋をそうおちょくる。西嶋の顔が少しピクッとした。その三浦の表情は少しにやけていて気味が悪い。
「にくびらないほうがいいぞぉ。どうしてここが人気なのか分かってるだろう?・・・・・・怖いからだよ。」
三浦は遊び半分に西嶋に言っていたが、西嶋にとってはまんざらでもないことだったため三浦の頭を軽く叩いた。(冗談じゃないぜ全く・・・・・・)と、西嶋は思いながらも歩く。
 と、そのとき!お化けが登場!
「うわぁ!」
そう言いお化けが三人を追いかけてくる。
「お化けだー!」
三浦は勢いよくそう言い、走り出す。その声には全く恐怖感はなく、どう見ても面白がっていた。
「ま、待てよ三浦!」
慌てて西嶋は三浦について走っていく。けれど三浦はものすごい勢いで走っていく。追いつきそうにないぐらいだ。そしてお化けがる程度追いかけてどこかへ行ってしまったころ、川村はハッとした。
「お、置いてかれちゃった・・・・・・どうしよう。」
川村は追いかけられているときは逆に遅く、二人に置いてかれてしまったのだ・・・・・・。
「まあいっか・・・・・・。」
そして川村は気劣り直して歩き出すのだった。って、これで大丈夫なのだろうか・・・・・・?

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